2010-06-17

ファニーゲーム

1997年 
オーストリア
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:スザンネ・ローター/ウルリヒ・ミューエ/フランク・ギーリング/アルノ・フリッシュ/ステファン・クラブチンスキー

11Aug.'09 DVD
★★★★☆

ハネケの作品はなんとなく避けていた。
心して観ないとココロを壊されると思い込んでたから(笑)
実は『〜U.S.A.』の方を先に観てしまったので、
こちらはかなり客観的に観ることができた。
さすがに怖いのは怖かったけど、 思ったほどじゃなかった。

で、何がこんなに不快で不愉快なんだろう。
なんか神経に障る、癪に障る、癇に障るのだ。

若者たちは一見は悪者にはみえない。
どちらかといえば下手に出て、
にこにこしている印象。
そんな彼らに対して、
自分たちの方が上という心理がどこかに働く。
簡単に若者を家の中に入れてしまったのも、
若者が卵を落としてしまったのも、
ケイタイが流しに落ちてしまったのも、
実はアナのちょっとした心のスキだったり、
奢りだったり、が引き起こしていることだ。
不親切に思われたくないから親切を装うけど、
親身にはなれずに、
中途半端な態度から起こっていることだ。
日常生活で誰でもしてしまいがちなことだし、
ひとつひとつは小さなことで、
取り立ててとやかく思うほどのことでもない。
だけど、重なるとイライラにつながる。
アナは無意識にそれを若者のせいにしていたけど、
若者を外で待たせておいて、
卵は包んで、落とさないような状態にして渡して、
ケイタイは流しの淵に置かなければ、
起こってなかったことかもしれない。
若者に対してイラつきながら、
ちゃんとしてあげればよかったと思う部分も、
どこかにあったかもしれない。
いい加減なことをしてしまってせいで、
新たなイライラを生んでしまった。
観客はアナのスキに気がついて、
「ほら、いわんこっちゃない」とイライラする。
いろんなイライラが膨らんで、充満してしまう。
ゲオルクはそんなイライラを感じながら、
また自分も無性にイライラしてしまって、
思わず若者を引っ叩いてしまう。
そしてそれを大義名分にして、
若者たちは家族を執拗にいたぶり始める。。。
途端に若者たちのにこにこした顔が、
この上なく薄気味悪くなる。
イライラに比例して、薄ら寒いものを感じ始める。

直接的な暴力シーンはほとんどない。
暴力が行われる時はカメラは違うものを写している。
でもその暴力の音だけははっきりと聞こえる。
こんな時の人間の想像力の豊かなことといったら、、、
どんな惨劇の映像を見せられるより、
悲惨な映像を思い浮かべてしまう。
ハネケは怖さを表現する天才だと思った。

救われないといえば、救われない映画だ。
けれど、こうなってはじめて、
この家族に人間の縮図のようなものを見たような気がした。
根拠もなしにココロを許して簡単に信用するのも人間なら、
他人と比べて、少しでも上だと思えば傲慢になるのも人間、
どうすることもできない状況なのにあきらめないのも人間だし、
敵ができたときに家族が結束する力を持つのも、人間なのだ。
ゲオルクがアナを逃がすときにいった台詞だけには、
救われた。

家族側に感情移入していると、 パウロに呼ばれて、
知らない間にゲームをする側になってて、
でも気持ちはなんとか家族を助けたいのに、
またパウロに呼びかけられて物語の外に放り出される。
その意図はわからないけど、
薄っぺらな感傷に浸るなといわれているような、、、
とことん負の要素しかない後味の悪い映画にしたかったのか。
その徹底ぶりに、そのこだわりに、
脱帽。。。
(2009.8.13)

0 件のコメント:

コメントを投稿