2010-11-07

絞死刑

1968年
日本
監督:大島渚 脚本:田村孟/佐々木守/深尾道典/大島渚
出演:佐藤慶/渡辺文雄/石堂淑朗/足立正夫/戸浦六宏/小松方正/松田政男/小山明子/尹隆道

02Oct.'10 新文芸座
★★★★★

冒頭、刑場のシーンでの死刑執行がどう行われるかの説明が、
あまりに淡々と語られリアルなので、
どれだけシリアスな映画なんだろうと思っていたら、、、

執行されて死ぬはずが、Rは死ななかった。

なるべくはずのことがそうならなかった時の、
あたふたする人間の様子がこれまたリアルに、
シニカルに描かれていた。
執行に立ち会う検察、刑務官、医者、牧師など、
それぞれの立場とそれぞれの思惑が、
生々しく露呈していく。
冒頭のシーンがあまりに深刻に語られているので、
余計にその滑稽さが際立ってみえた。

制度があって合法的で、仕事だからその場にいるわけで、
さっさと終わらせたいのが本音だろう。
かくいうワタシだって、この問題にはかなり逃げ腰。
直面せずにいられるなら、その方がいいと思ってる。
そういうどこか他人事にしてしまっている猾さも、
あからさまに見せている。
しかもRは罪人で朝鮮人。
それこそ遠い存在になっている。
けど、終盤のRの台詞に、
自分たち人間としての問題だとはたと気づく。
自分たちの問題としてぐっと近づく。

小松川事件を背景にしていて、
大島渚の信条もあるんだろうし、
時代もあるように思うし、
Rが朝鮮人で、朝鮮問題とか差別問題とかと、
死刑が絡み合っているのはそれはそれで、
興味深かった。
けど、贅沢を言えば、
Rがごく普通の典型的な日本人で、この設定だったら、
どうなってただろう。
それが観たいと思った。
(2010.10.19)

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