2010-09-10

ウディ・アレンの夢と犯罪

2007年
イギリス
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ユアン・マクレガー/コリン・ファレル/ヘイレイ・アトウェル/サリー・ホーキンス/トム・ウィルキンソン/フィル・デイヴィス/ジョン・ベンフィールド/クレア・ヒギンズ

09Sep.'10 早稲田松竹
★★★★★

ここ何作かのウディ作品は、毎回同じ感覚に陥る。
観終わった後は、?がいっぱいになってて、
それはあまりにも短絡的でしょ、ってなるんだけど、
なのに、時間がたつと、じわじわと、
実はこの映画、めちゃくちゃ深いんじゃない?って、
思えてくる。なんでだろう。。。不思議だよなぁ。
ワタシがウディを贔屓しているだけじゃないと思うけど。

兄弟で、ヨットを手に入れて、
「カサンドラの夢」と、名付ける。
カサンドラ、、、ギリシャ神話では、不吉を意味する。。。
なんか、嫌な予感。

労働者階級のこの兄弟、働いて、がんばって、
自分の度量でなんとかしようという発想がそもそもない。
弟のテリーはギャンブル好き。
「大きな賭けはしない」といいながら、
家を買う金を作ろうとしてポーカーに。結局、負ける。
兄のイアンは実家のレストランを手伝いながら、
堅実なところを見せながらも、野心的で実業家志望。
実業家といっても、
地位と名誉に目が眩んでいるようにしか見えないけど。
それもラクして手に入れることしか考えてない。

目の前にいる父親は地道にレストランを経営しているのだが、
兄弟は馬鹿にするだけ。
ホントはすごくいい手本なのに、そんなことには気づかない。

で、世界を股にかけて成功している伯父さんを、
いつも羨望の眼差しでみている。
しかし、その伯父さん、かなり胡散臭い。
兄弟が伯父さんに金を無心しようとすると、
伯父さんは殺人を兄弟に強要する。
「血がつながってるのに、言うこときけないのか」って。
さすがに兄弟は最初は拒むけど、
直面している問題の解決を他の方法では考えられなくて、
「これしか道はないんだ」なんて言って、
コトに及んでしまう。。。ホント、短絡的。
で、案の定、転落人生、、、ついに。。。

あまりにも短絡的すぎて、簡単にコトに及ぶので、
えー?って思うんだけど、
これって、そっくりそのまま、
現代社会なんだよなぁって思った。
「殺したいから殺した」とか
「むしゃくしゃしてたから殺した」とか、
それこそ、短絡的な動機の事件が多い昨今だけど、
そんなのと、さして変わらない。
なんていうか、なんか軽いし、何でもラクして簡単に、
ってのが、現代のありがちな風潮だったりもして、
この兄弟に現代がすごく捉えられていると思う。

それに、この伯父さんの理屈って、
理屈にもなっていない、ただの強要。 けど、実はこれが罠。
この罠に嵌って起きる罪はいくらでもある。
「血がつながってるんだから」
「家族だから」
「世話になってるから」
というと、妙な正当性が生まれる。
全然、正しくなんかないんだけど、
当事者の間ではとても大切なことのように錯覚してしまう。
そこにほんのちょっとでも、
弱みや、利用しようという企みがあれば、
もうそれだけで、その罠が成立する。
で、この兄弟もまんまとこの罠に嵌ったわけで、、、
油断してたら、すぐに嵌ってしまうわけで、、、
結構どこにでもあったりするわけで、、、
もはや、他人事じゃない。
ばかばかしいと思いながらも、
でも自分だってそうなるかもっていう不安は、
どこか、もそもそしたところで感じてしまうのだ。

そういうことを、押し付けがましくなく、
でもどこかで感じられるようにできている、、、
何を感じて考えるかは、観客次第という、
ウディのスタンスは変わっていない。

コリン・ファレルの濃い眉がどんどん寄っていくのが、
なんとも切なく、哀愁が漂っていた。 
テリーは、はまり役だなぁと思った。

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