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2011-01-10

告白

2010年
日本
監督:中島哲也 原作:湊かなえ
出演:松たか子/岡田将生/木村佳乃/高橋努/井上脇海/田中雄土/西井幸人/能年玲奈/橋本愛/三吉彩花/山田諒/山谷花純

05Dec.'10 早稲田松竹
★★☆☆☆

ああ、『嫌われ松子の一生』を観た時と、
同じ印象を受けてしまった。。。

結局、映像が「闇夜のステッキ」なのよ。
遠目からはキラキラしてるものが並んでるんだけど、
よくよく明るいところで見たら、
たいしたものじゃなかった、、、みたいな。
どこかで見たようなCMの技巧ばかりのオンパレード。
その技術はそれなりのものがあるとは思う。けど、
そういうのはひとつ効果的に使えば、十分。
こんなに並べられたら、その効果なんて半減するし、
本末転倒で、そもそも何がしたいのかすらわからなくなるよ。

それでも『松子』は、松子の個性的な人物像を描けばいいので、
こういう映像でもまだよかった。
ファンタジーとして受け入れられるからね。
でも、こんな社会派の題材を扱うなら、
とことんリアリティを追求してくれないと、
嘘くさくて、観ていられなくなる。

物語の設定があり得なくて、毒ばっかりでも、
それはそれでいいと思う。
実際に先生がこんな告白をして生徒に復讐なんてしたら、
問題にならないわけがないけど、そんな無理な設定でも、
現実だと錯覚してでも観ることができれば、
なにかしら訴えるものが浮き彫りになってくるはず。

「どっかーん」に、違和感があった。
びっくりはするけど、区切りがついちゃうんだよね。
「ばちん」がいつくるかわからない、不気味さがあるから、
少年Aも少年Bも怯えてたんでしょ。
わけがわからず、ひたひたやってくるから、怖い。
いつまでも終わらない、なくならないから、さらに怖い。
その怖さがあればこそ、いじめや虐待ってことを、
正面から考えようとするだろうし、
親と子、先生と生徒、友だち同士の関係、
人とどうつきあうか、向き合うかを理解するし、
孤独がどんなに辛いものなのかを知るんだと思う。
爆発しちゃうと、日常の「ぱちん」はどこかに追いやられて、
忘れられてしまう。。。
本当の怖さは終わらないこと。
「どっかーん」は緊張を解放しちゃうんだよ。

「どっかーん」的なものは、
山場を作るには必要なのかもしれないけど、
そんなのは、物語?か、映画?かの都合でしかない。
結果、何を訴えたいのかが希薄になってしまった。
扱っている題材は気が遠くなるほど、重いのに、
どうにも薄っぺらで、単なる娯楽映画になっている。
かといって、楽しめるものでは決してない。
どこをどう切りとっても中途半端にしかみえない。

松たか子は確かに巧かった。
抑えた演技に、すごく迫力があった。
なのに、それすらうまく使い切れてないように思えた。
(2010.12.30)

害虫

2002年
日本
監督:塩田明彦 
出演:宮崎あおい/蒼井優/沢木哲/田辺誠一/りょう/石川浩司/伊勢谷友介/天宮良/すずき雄作/芳賀優里亜/米丘ゆり/半田美保子/西満衣/三輪恵未/寺島進/光石研/大森南朋/中村久美/石丸謙二郎

05Dec.'10 早稲田松竹
★★★☆☆

なんとも、苦しい映画だった。
救われない映画なんていくらでもあるけど、
救われないだけじゃなくて、
ぼやぼやしてると、
押しつぶされそうになって、
そうなりそうなのが、わかっていながら、
何も手立てがない。
それが、倍々に、苦しさを増していく。。。

宮崎あおいちゃんも蒼井優ちゃんも、瑞々しいなぁ。
13歳のあどけない可愛さと、
でも、どこかさめてる残酷なところとが、
交錯して、そのあどけなさが、逆に息苦しくしていた。

なんとも、、、とらえどころがないんだよなぁ。
こうなっちゃったら、お手上げだよ。。。

10代か20代前半ぐらいで、感受性の強い人だったら、
響くものがあるんだろうなって、なんとなく思った。
 (2010.12.29)

2010-12-02

東京ゴッドファーザーズ

2003年
日本
監督:今敏 音楽:鈴木慶一 ムーンライダース 歌 ムーンライダース
出演:江守徹/梅垣義明/岡本綾/こおろぎさとみ/寺瀬今日子/飯塚昭三/加藤精三/石丸博也/槐柳二/屋良有作/犬山イヌコ/矢原加奈子/柴田理恵/山寺宏一/能登麻美子/大塚明夫/小山力也

31Oct.'10 早稲田松竹
★★★★☆

今回観た、『パプリカ』『千年女優』とこれでは、
この『東京ゴッドファーザーズ』が一番よかった。
一番現実的で、ホームレスとはいえ、
家族という一番身近なテーマを扱っているからかな。
ま、そんなに都合良くことが運ぶかいなっていう、
ツッコミはあるにしても(笑)

ギンちゃんもハナちゃんも、ミユキも、
なんか生きていくのに不器用なんだよね。
いろんなもの抱えていながら、
でも人情にはあつくて、ほっとけなくて、
結局面倒なことでも、
自分たちからクビを突っ込んでいくみたいな。
要領は悪いけど、急場の馬鹿力は持っていて、
そんな展開が小気味よくて、面白かった。
泣いて、笑って、何かといそがしい映画だった。
(2010.11.29)

千年女優

2001年
日本
監督:今敏 音楽:平沢進
出演(声):荘司美代子/小山茉美/折笠富美子/飯塚昭三/山寺宏一

31Oct.'10 早稲田松竹
★★☆☆☆

発想はいいと思う。
いろんな人生を演じながら、
一途な恋を追いかける。。。
ま、主人公があまりに健気すぎて、
気持ち悪いなとは思ってたけど、、、
けど、最後の台詞にはしらけてしまった。

毒をもたせるなら、本編でやらなきゃ。
最後の台詞ひとつですませようなんて、
ちょっと安易じゃない?
しかもこの時代の戦争を生き抜いた女が、
女優とはいえ、こんな薄っぺらなことを言うだろうか。
一番こういうことを言わない世代だと思うんだけど。

叶わぬ恋ではあったものの、それを秘めた姿は、
美しく凛としてステキな老婆だったのに、
この最後の台詞で、自己中心的な軽い女になってしまった。
意図していたものがなんなのかわからない。
ワタシには理解できない台詞だった。
(2010.11.29)

2010-12-01

パプリカ

2006年
日本
監督:今敏 原作:筒井康隆 音楽:平沢進
出演(声):林原めぐみ/江守徹/堀勝之祐/大塚明夫/山寺宏一/田中秀幸/こおろぎさとみ/坂口大助/岩田光央/愛河里花子/太田真一郎/ふくまつ進紗/川瀬晶子/泉久実子/勝杏里/宮下栄治/三戸耕三

31Oct.'10 早稲田松竹
★★★☆☆

筒井康隆っぽい話だと思ったら、
筒井康隆だった。。。

You Tube でちょろっと行進のシーンは観ていて、
音楽とそのシーンがおもしろそうだったので、
かなり期待度が高くなってて、、、
しかも追悼ということもあって、
風邪気味だってのに、並ばされ、外で待たされ、
やっとの思いで観たんだけど。。。
映画で並ぶのなんて、いつぶりだろう。

うーん。
日本のアニメの技術はすごいんだと思う。
原作は読んでないけど、筒井康隆の世界観は出てるし、
音楽は面白いし、ちゃんとまとまってるし、
文句なんてつけようもない。
だけど、なんだかもの足りなさを感じてしまった。
なんだろう。。。

アニメーションも声優も音楽も原作も、
それぞれがすごくプロなんだけど、
きっちり丁寧な仕事はしてるんだけど、
巧く混ざってないというか、、、
まとまりすぎて、それ以上に昇華してないというか、、、
うーん。

筒井康隆は本で愉しみたい。
世界観はちゃんと出てはいるんだけど、
映像化するとどうしても世界が小さくなっちゃう。
もっともっと奥行きのある話だったんじゃないかと思う。

今さんはすごく真面目な方だったんだろうな。
作品を観てそう思った。
(2010.11.29)

陸軍中野学校 雲一号指令

1966年日本
監督:森一生
出演:村松英子/加東大介/佐藤慶/中村隆/中野誠也/伊達三郎/戸浦六宏/越川一/木村玄/森矢雄二/尾上栄五郎/原聖四郎/石原須磨男/近江輝子/香山恵子/毛利郁子/H・ジョンソン

24Oct.'10 新文芸座
★★★☆☆

雷蔵は相変わらずで、申し分ないんだけど、
一作目より力量不足を感じてしまうのは何だろう。。
エンターテイメント的には、満足できるんだけど。

加東大介はもとより、佐藤慶、戸浦六宏、
芸者役の妖しさを醸し出している村松英子等等、
脇役陣の豊富さはさすがに贅沢だなぁと思う。
(2010.11.4)

陸軍中野学校

1966年
日本
監督:増村保造
出演:市川雷蔵/小川真由美/加東大介/村瀬幸子/早川雄三/待田京介/仁木多鶴子/三夏伸/仲村隆/ピーター・ウイリアムス/E.H.エリック

24Oct.'10 新文芸座
★★★★☆

とにかく雷蔵がかっこいい。
前半の学校の場面ではほとんど雷蔵の台詞はないけど、
でも存在感だけはある。
実際のスパイ活動も今となってはかなり原始的だけど、
それでもその立ち振る舞いに惚れ惚れする。
そのスパイ特有の非情さ、卑劣さに、やられまくり。

小川真由美の凛とした姿にも好感がもてた。

この時点でシリーズ化されるかどうかが、
わかってたとも思えないけど、
でもなんだかその匂いがしてしまった。
増村保造ならではの艶気があるだけに、
予定調和な感じが残念に思った。
(2010.11.4)

2010-11-07

少年

1969年
日本
監督:大島渚 脚本:田村孟
出演:渡辺文雄/小山明子/阿部哲夫/木下剛志

 06Oct.'10 新文芸座
★★★★☆

少年はつらい。
そして、限りなく孤独だ。
自分が望んだ放浪でないだけに、
結局親のいいなりになるしかない。
逃げ出しても、死のうとしても、上手くいかない。。。
縋る何かを求めていたように思える。
継母とはいえ、母親が買ってくれた黄色い帽子や時計に、
執着していたのは、やはりそういうことな気がする。

少年がすごく素朴な子で、いい。
一重の目が印象的だった。

事実にあった話だそう。
そんな当たり方でよく騙せるものだと思いながらも、
でも危ないなぁって、ひやひやしたり、、、

雪だるまの顔が赤い長靴って、あんまりかわいくない。
少年は少女への罪の意識で、自分のしていることに気づいて、
それに立ち向かって壊すわけで、
だからいいのか、、、かわいくなくて。
ここのシーンはさすがに胸が締め付けられた。

ただ、この雪だるまが日の丸だという解釈があって、
たぶん監督はそう見せるようにしたんだろうけど、
でも少年にとっては、国家や日の丸ということより、
この状況で生きていかなくてはならないしんどさの方が、
大きいように思える。
だからこのかわいくない雪だるまにしっくりこない。
確かに父親は戦争での疵を負っていて、
国家に対して一物があるのはわかるけど。

儀式

1971年
日本
監督:大島渚 脚本:田村孟/佐々木守/大島渚 音楽:武満徹
出演:川原崎健三/賀来敦子/佐藤慶/乙羽信子/小山明子/小松方正/渡辺文雄/土屋清/戸浦六宏/中村敦夫/椿隆一/成島有美/大田良明/椿幸弘

06Oct.'10 新文芸座
★★★★★

とかく旧家は儀式が多い。

家族の一員になる儀式。
母親の葬式。
古めかしい家長制度の儀式。
家の体裁を保つがための滑稽な結婚式。
少年が青年になる初体験、、、
これも捉え方次第で儀式?。。。などなど。

家長たるものが全てでありながら、
その古くさい風習をアイロニカルに描きつつ、
妙に艶かしいシーンが印象的。
特に艶かしく感じるのは、
満州男少年が校庭で、地面に耳をつけているところ。
いがぐり頭の柔らかそうな短い髪の毛と透明感のある肌の色、
そしてその悩ましい表情が、なんともそそられる。
少年のいろんなものを感じながらもうまく表現できず、
そのままでいるしかない様から目が離せない。

大人になってもどこかおどおどしている満州男。
対照的にいつも不敵で自信たっぷりの輝道。
何かしらにつけ冷めている律子。
家長制度の鬱屈さに、息がつまりながら、
同じような境遇にいながら、
性格はそれぞれになるんだなと思った。
親の立場とかもあるんだろうけど。


それにしても佐藤慶の存在感に圧倒された。
小山明子はさすがにきれいだなぁ。
白い御御足がこれまた艶かしかった。
それから、妙に落ち着かないけど、
でもなんとも美しい音楽、、、武満徹だったんだ。
何気にすごい映画だ。
(2101.10.20)

愛のコリーダ 2000

1976年
日本
監督・脚本:大島渚 製作:若松孝二
出演:藤竜也/松田英子/中島葵/芹明香/阿部マリ子/殿山泰司/藤ひろ子/白石奈緒美/青木真知子/東祐里子/安田清美/小山明子

02Oct.'10 新文芸座
★★★★★


20代で初めて観た時は、ポルノにしか思えず、
途中でギブアップ。
10年前に完全ノーカット版が上映された時は、
最後まで観るも、意味が分からず、理解できず。
しかしながら、40代の今なら、
吉蔵と定の愚かさや哀れさをも受け入れながら、
この上なく美しい映画だと真に思う。

藤竜也、若いなぁ。
精悍な躯がきれいだなぁと眺めてた。
松田英子の一途な感じに、すごく好感がもてた。
阿部定はいろんな女優がやっているけど、
ワタシには松田英子の阿部定しか、
もはやあり得なくなっている。

戦時中にありながら、
性の快楽に明け暮れている二人。
わざわざ出征のシーンを入れて、
世の中がそんな状況でも、
二人はその欲望に溺れていて、二人をとことん貶めている。
それでもなお、溺れながらも、お互いを思う愛を感じさせる。
結局、究極の結末となるけど、
吉蔵もその瞬間は絶頂だっただろうし、
定もその後の人生にどんな試練があろうとも、
それ以上の幸福感に満ちあふれていただろう。
そして、
108分うちのほとんどが性交渉なのにも関わらず、
不快にならないのは、二人の愛情が、
何の飾り気もなくむき出しのまま、
描かれているからだろう。
(2010.10.21)

絞死刑

1968年
日本
監督:大島渚 脚本:田村孟/佐々木守/深尾道典/大島渚
出演:佐藤慶/渡辺文雄/石堂淑朗/足立正夫/戸浦六宏/小松方正/松田政男/小山明子/尹隆道

02Oct.'10 新文芸座
★★★★★

冒頭、刑場のシーンでの死刑執行がどう行われるかの説明が、
あまりに淡々と語られリアルなので、
どれだけシリアスな映画なんだろうと思っていたら、、、

執行されて死ぬはずが、Rは死ななかった。

なるべくはずのことがそうならなかった時の、
あたふたする人間の様子がこれまたリアルに、
シニカルに描かれていた。
執行に立ち会う検察、刑務官、医者、牧師など、
それぞれの立場とそれぞれの思惑が、
生々しく露呈していく。
冒頭のシーンがあまりに深刻に語られているので、
余計にその滑稽さが際立ってみえた。

制度があって合法的で、仕事だからその場にいるわけで、
さっさと終わらせたいのが本音だろう。
かくいうワタシだって、この問題にはかなり逃げ腰。
直面せずにいられるなら、その方がいいと思ってる。
そういうどこか他人事にしてしまっている猾さも、
あからさまに見せている。
しかもRは罪人で朝鮮人。
それこそ遠い存在になっている。
けど、終盤のRの台詞に、
自分たち人間としての問題だとはたと気づく。
自分たちの問題としてぐっと近づく。

小松川事件を背景にしていて、
大島渚の信条もあるんだろうし、
時代もあるように思うし、
Rが朝鮮人で、朝鮮問題とか差別問題とかと、
死刑が絡み合っているのはそれはそれで、
興味深かった。
けど、贅沢を言えば、
Rがごく普通の典型的な日本人で、この設定だったら、
どうなってただろう。
それが観たいと思った。
(2010.10.19)

2010-08-31

黒蜥蜴

1968年
日本
監督:深作欣二 原作:江戸川乱歩 戯曲:三島由紀夫
出演:丸山明宏/木村功/川津祐介/宇佐見淳弥/松岡きっこ/西村晃/小林トシ子/丹波哲郎/三島由紀夫

28Aug.'10 新文芸座
★★★☆☆

いやはや、いやはや。
『黒蜥蜴』は結局、黒蜥蜴あってこそ。
大映版が京マチ子なら、
こちらは丸山明宏の独壇場。

もう、美しすぎる。ため息もの。
可憐でいながら、艶かしい。
その芳醇な姿から目が離せなくなった。
ホテルから逃げる男装姿には、
なんだか妙な錯覚をおこしてしまった。

オープニングのアングラ感はなかなか好きかも。
大映版から6年で随分洗練されたなぁと思う。

ただ、ストーリーは陳腐に感じてしまった。
同じ日に『陰獣』を観たせいかもしれないけど。
でもエンターテイメント性は『黒蜥蜴』の方があるんだろうな。

三島由紀夫がどういう風に出てくるのか興味津々だったけど、
さすがに、びっくり。笑っちゃった。

黒蜥蜴

1962年
日本
監督:井上梅次 原作:江戸川乱歩 劇化:三島由紀夫
出演:京マチ子/大木実/叶順子/三島雅夫/目黒幸子/川口浩/緋桜陽子/杉田康

 28Aug.'10 新文芸座
★★★☆☆

いやはや、
オールナイトで江戸川乱歩特集4作目で、
さすがに朦朧としていて、最後がこれでよかった(笑)

オドロオドロしい『黒蜥蜴』を想像していたので、
肩すかしで、笑えた。
京マチ子はさすがだ。
男装で踊ってるし。
不意をつかれてあっけにとられたけど、
別の意味で期待を裏切らない。

同じ日に丸山明宏のも観ていて、
どちらも劇化に三島由紀夫が絡んでいて、
だいたい台詞は同じ感じだったけど、
こうも違うものになるっていうのが、面白かった。
監督の違い? 配給会社の影響? 

ま、なんにしろ、京マチ子につきる。
大阪のホテルでの着物姿は、
どこにでもいそうなおばさんなのに、
ドレスになるとしっかり悪女になる。
で、この存在感。

こういう女優がいたということが、
この時代の映画の豊かさを物語っているように思う。

江戸川乱歩の陰獣

1977年
日本
監督:加藤泰 原作:江戸川乱歩
出演:あおい輝彦/香山美子/大友柳太朗/川津祐介/中山仁/仲谷昇/野際陽子/田口久美/加賀まりこ/尾藤イサオ/任田順好/若山富三郎/藤岡琢也/菅井きん/倍賞美津子

28Aug.'10 新文芸座
★★★☆☆

いやいや、悪くはないとは思うんだけど。
なんだろう。何が足りないのか、
何が違うのか。。。

香山美子は艶かしかった。
楚々とした着物姿の虫も殺さぬような顔した女で、
しかし実はとんだ食わせ者だったってのが、
うまく描かれてたと思う。
自分で寒川に相談しておきながら、
寒川が謎解きをしていこうとすると、
ココロここにあらず、我関せず、な感じで、
気持ちはもう、、、違うところにいっちゃってる。。。
その表情になんだかそそられちゃった。

なんだけど、
その肝心要の寒川の謎解きが、、、うーん。
全体的に雰囲気はあるだけに、
ここが棒読みだとちょっとツライ。。。
棒読みというか、一生懸命すぎるというか、
がんばっちゃってるというか、力が入りすぎてるというか、
ヘっ?て思って、ふとこっちが我にかえっちゃったよ。
ここは幻想に漂わさせてほしかった。。。

でも、変に回想シーンとか入れてないところは、
よかったと思う。
ワタシは原作読んでないけど、トリックはよくわかったし。
これ以上説明する必要はないと思う。
あ〜、だからこそ酔わせてほしかった。残念。


あとやっぱり、囲碁のシーンは好き。
直接的に云わずに、何を意味しているのか、
映像と音で怪しく表現してるのは、面白かった。
ちょっと、ぞくぞくしたし。
加藤泰監督は、映像の名手だったのだそう。
だからか。いろいろ駆使してるのは、わかる。
囲碁のシーンは引いたところから、ローアングルだったり、
いきなり目のアップだったり、と、
くるくる変わることで、臨場感というか、
心理的な緊張感が伝わっていいと思った。

けど、どこの場面だったか忘れたけど、
寒川と静子を望遠レンズですごく近くにして、
重なるように見せておきながら、
いきなり標準レンズの画角に切り替わったところがあって、
ここでもまた、ワタシは、はたと我にかえっちゃったのよ。
望遠で、ここまで寄って、これだけピントを合わすには、
光量もそれなりに必要になってくるし、
よほどじゃなければやらなくてもいいと思うんだけど、
この時代の撮り方なのかな。
他の監督の作品とかでも、結構見る。
ワタシにはその良さがわからない。
なんか鼻について、あまり好きじゃない。
ま、それはいいけど、
違和感のある画角の切り替えはどうかと思う。
細かいことで申し訳ないけど、こういうことで、
ぽんと現実に戻されちゃうのよ。
ワタシは乱歩の世界に浸りたくて観てるんだから。

とにかく、ワタシにはあと一歩って感じだった。
全体的な雰囲気と余計なことをしてないところは、
好きだっただけに、なんだかもったいないなって、思う。

2010-06-04

トウキョウソナタ

2008年
日本
監督:黒沢清
出演:香川照之/小泉今日子/小柳友/井之脇海/井川遥/津田寛治/役所広司

18Apr.'09 早稲田松竹にて
★★★☆☆

キョンキョンがお母さんになってる。
しかもこんな大きな息子の。
お母さん役としてはとてもいいと思う。
すごく自然で自然に息子を心配している。
香川さんの父親も、悪くないと思う。
リストラされてそれを隠しながら、
家族との接し方が横柄になる心理をうまく表現している。
家族が不協和音で少しずつ何かが狂い出していくところまでは、
すごくよかった。
映像も重くて暗い感じだけど、
家族がこういう状況ならありだし、
全体的な雰囲気はきらいじゃない。

なんだけど、
こうも突拍子のないことが続くとだんだんしらけてくる。
長男の米軍の志願兵って、やっぱり唐突だし。
どうして米軍なのかは説明はしてるけど、
だから余計に、
なんで自衛隊じゃダメなのってツッコミたくなる。
次男がピアノを習いたいのはいいけど、
別に天才にしなくてもいいのに。
で、強盗って。
しかもその強盗と海まで行っちゃうって、、、

幸せだと思っていた家族の日常のそれぞれに、
非日常が起こってしまい、
その非日常を超える非日常が起これば、
また家族を取り戻せるという構図、、、
その思惑はわからなくもないけど、
あまりにそれが露骨にみえちゃって、
鼻についちゃった。

現代にありがちな家族像はよく描けていただけに、
もうちょっとリアリティがあればいいのにと思った。
 (2009.5.24)

アキレスと亀

2008年 
日本
監督・脚本:北野武
出演:ビートたけし/樋口可南子/柳憂怜/麻生久美子/中尾彬/伊武雅刀/大杉蓮

18Apr.'09 早稲田松竹にて
★★☆☆☆

どうも北野作品は反りが合わないらしい。
といえるほど、いくつも観てるわけじゃないけど。
なんだろう。なんかあざとい感じがしてしまう。

まずこの映画で、
なんでこんなに人を殺さなきゃならないのか、
理解に苦しむ。やたら自殺が多いし。
「あいつら芸術がわかんねえんだよ」
たぶん、この台詞にイライラするんだと思う。
こんなことを言っているどうしようもないやつを、
献身的に支える妻ってのを描きたいんだろうけど、、、
その描き方にどうも惹かれない。

売れない貧乏芸術家とその妻の話なんて、
どこにでもありそうなもんでしょ。
ギャグ仕立てでいくなら、もっと笑わせてくれなきゃ。
奥さんにこれだけのことをやらせるだけの魅力が、
真知寿に感じられない。
学生まではまだ何かありそうって思わせる匂いだけはあるけど、
オヤジになってからはその匂いすら消えちゃったし。
そもそもこの話に説得力がないんだと思う。
(2009.5.24)

たみおのしあわせ

 2007年 
日本
監督:岩松了
出演:オダギリジョー/麻生久美子/原田芳雄/大竹しのぶ/小林薫/石田えり

14Nov.'08 飯田橋ギンレイホールにて
★★★★☆

なんだかよく意味がわからなかったけど、
ま、それなりにおもしろかったからいいいかな。

そう思わせるのは、父親役の原田芳雄と脇役陣だろう。
大竹しのぶ、小林薫、石田えり、、、
彼らの一筋縄じゃいかなそうな、
人間臭いというか、ぬめった感じというか、
そんなものを漂わされたら、目が離せなくなる。
それがたみおのしあわせに何の関係があるのかってのは、
それこそ意味がわかんないんだけど。
たみおにしろ、瞳さんにしろ、
たみおがどんなにヘンなカッコしてても、
主役二人は若くきれいなお飾りになってしまってる印象。
瞳さんの浴衣姿は世の殿方衆に夢を与えたとは思うけど。

たみおや瞳さんの20年後、30年後が、
父さんや宮地さんや透おじさんだったとしたら、、、
そりゃ、
そんなに褒められたような生き方じゃないかもだけど、
でも本人たちはよろしく楽しくやっている。
しあわせって何ってことなら、
何かは示しているような気がする。
それで十分だと思う。

意味もなく、清志郎が出てくるのもちょっと嬉しかった。
 (2008.11.29)

西の魔女が死んだ

2008年 
日本
監督・脚本:長崎俊一
出演:サチ・パーカー/高橋真悠/りょう/大森南朋/高橋克実

17Oct.'08 飯田橋ギンレイホールにて
★★☆☆☆

ちょっと期待しすぎたかな。
自然は美しいし、その山の暮らしは素敵だし、
穏やかなおばあちゃんの言葉はどれも心を打つ。
魔女修行と称してマイに暮らしの仕事をさせる。
マイとの向きあい方もさすがだ。
魔女だけど、占いには興味がないと言う。
「日々の変化を楽しみたいから、どう変わるかに興味がない」
というのには、はっとさせられた。

なんだけど、映画には惹かれなかった。
野いちごのジャムづくりやらラベンダーのシーツ干しやら、
どこを切りとっても絵本から抜け出したような映像やら、
「素敵な山の暮らし」がこれでもかと押し寄せてきて、
ちょっと息が詰まった。
きっとこういうところを見せたかったんだと思うけど。
世界が完璧に作り上げられていて、
文句が言えない窮屈さを感じてしまった。

唯一、リアリティを感じたのはキム兄の存在。
彼がでてくると、単なる夢物語じゃないんだと認識できて、
そこはよかったと思う。
(2008.10.18)

人のセックスを笑うな

2007年 
日本
監督:井口奈己
出演:永作博美/松山ケンイチ/蒼井優/忍成修吾/あがた森魚/温水洋一/桂春團治

09Oct.'08 早稲田松竹にて
★★★★★

とっても自然体だ。
台詞というより普通におしゃべりしているようにしか、
みえなかったり。でもそれがなかなかよかった。
ところどころ聞き取れないけど、それもま、いっかって、
のほほんと観ることができた。

冬の日のちょっとしたアクシデントみたいな恋。
ユリが主導のようにみえるけど、ちょっと違うと思う。
みるめくんに会っちゃったんだもん、しょーがないよ。
って、そんなところじゃないかな。
年上だからとかいくつ違うとか、
そういうことで恋をするわけじゃないんだっていう実例を、
みたような気がした。

とことん力が抜けていながら、
それでもなんとか自分の足で立ってる、立とうとしている、
4人が4人ともいい感じだった。
どこにでもある地方の田舎な風景がなかなか味になってた。
澄んだビリッと冷たい空気がいいスパイスにもなってた。
(2008.10.23)

ジャーマン+雨

2007年 
日本
監督:横浜聡子
出演:野嵜好美/藤岡涼音/ペーター・ハイマン/ひさうちみちお/本田龍徳/徳永優樹/田尻大典

28Feb.'08 吉祥寺バウスシアターにて
★★★★★

う〜ん。なんていったらいいのか、、、
やられた〜の一言に尽きる。
油断しまくりの横っ腹に、
ボディブローがすこーんと入っちゃったって感じだ。
だからかな。
かえってめちゃくちゃ清々しいのである。

なんだか危なっかしくてはらはらしてしまう。
変な狼狽心の固まりになってみていた。
出てくるオトナはどいつもこいつも頼りなさげで、
救ってくれそうもない。
よし子の現実が変わるわけもない。
何かミラクルが起こるわけでもない。
でも当のよし子や小学生たちはそんなのそっちのけ。
笛を吹いたり、作曲をしたり、歌ったりが、
奇妙だけど、とにかくキラキラしているのだ。
わけの分からない妙に明るい光が射しているのだ。

よし子は確かにゴリラ顔だけど、
時折みせるマジな顔がかわいいよね。
じつにいい顔なんだよね。
(2008.2.29)