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2010-06-17

ファニーゲームU.S.A.  

2007年 
アメリカ/フランス/イギリス
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ナオミ・ワッツ/ティム・ロス/マイケル・ビットン/ブラディ・コルベット/デヴォン・ギアハート/ボイド・ゲインズ/シオバン・ファロン・ホーガン

10Aug.'09 DVD
★★★★☆

キャストがハリウッドの俳優になっただけで、
1997年に公開のオリジナルと、
台詞もカメラのアングルも音楽も、ほとんど同じ。

ハネケがハリウッドで『ファニーゲーム』を撮るにあたって、
自分が監督になることと、
内容を変えないことを条件にしたらしい。
ハネケのこの映画へのこだわりは相当なものだろう。
ある意味、ハリウッドへの挑戦? ともとれる。 

ハリウッドの方が、新しいのだから当然なんだけど、
映像が垢抜けて明るい印象。家具とか、服とか。
ナオミ・ワッツの泣きはらした顔に迫力があって、
ティム・ロスはセレブなおとうさんが似合ってて、
犯人ふたりが、似た雰囲気のせいか、
その存在だけでいやーな感じを醸し出していて、
こちらもこちらで、すごいかも。

逆に古いからか、
オリジナルの方がひたひたと恐怖が増していくように感じた。

どっちを観ても、不快になる、後味が悪い、のは変わらない。
(2009.8.12)

隠された記憶

2005年 
フランス/オーストリア/ドイツ/イタリア
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ダニエル・オートゥイユ/ジュリエット・ビノシュ/モーリス・ベニシュー/アニー・ジラルド/ベルナール・ル・コック/ワリッド・アフキ/レスター・マクドンスキ

12Aug.'09 DVD
★★★★★

すっきりしない不安感だけが残ったまま、
終わってしまった。
あんまりすっきりしないので、もう一度観たけど、
誰がビデオを送りつけた犯人
(犯人といっても、ビデオと絵を送っただけなんだけど)
かは、わからなかった。
あと、予告で衝撃のラストといっているシーンも、
巻き戻してみて、ようやく見つけたけど、
それがどうビデオと関係があるのかはやっぱり、不明。
いろんな方のレビューやブログを拝読したものの、
そういう解釈もあるなー、どまり。
ただ、ああだ、こうだと、いろんなふうに考えられるのは、
この映画の面白いところなのかもしれない。
監督も「誰がビデオを送ったかは重要ではない」と、
いっているし、犯人探しはあまり意味がなさそう。

で、もうひとつ腑に落ちないのが、マジッド。
なぜ、死ななくちゃならなかったんだろう。
ジョルジュへの見せしめ? 
そりゃ裕福じゃないし、移民の子どもで苦労もあったろうし、
幼い頃のジョルジュの仕打ちは許せないかもしれないけど、
でも、息子は立派に成長しるし、
それなりに生きているように見えたのに。。。
見せしめだろうが何だろうが、
ジョルジュのために死ぬなんてあり得ないと思う。
じゃ、なぜ?

だけど、ひとつだけいえるのは、
ジョルジュはマジッドが死んだことで、
またひとつ「疚しさ」を抱えなくてはならなくなった。
マジッドに再会できたのは、
6才の時についてしまった嘘の清算をするいい機会だったはず。
なのに、ジョルジュはビデオのことばかりで、
結局それは自分の不安を解消したかっただけで、
マジッドを気遣いもせず、
謝罪するなんてことに到底及ばなかった。
それどころか脅迫めいたことまで言っていた。
お金持ちで教養のあるジョルジュ。
品位などかけらも見せることなく、
使用人の息子のマジッドをいまだに蔑んでいた。
傲慢という罠に思いっきり嵌っていた。
表向きには犯罪者ではないし、
これからも今まで通りの暮らしができるだろう。
でも、目の前で起きたことはあまりに強烈で、
今度ばかりはどんなに封じたくても、
封じきれるようなものではない。
死ぬまで、このずっしりと重い「疚しさ」という荷物を、
持ち続けなくてはならなくなってしまったのだ。

これって、どんな罰より耐えがたいことだと思う。
だんだん背筋が寒くなってきた。。。
やっぱり、ハネケだ。
(2009.8.14)

ファニーゲーム

1997年 
オーストリア
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:スザンネ・ローター/ウルリヒ・ミューエ/フランク・ギーリング/アルノ・フリッシュ/ステファン・クラブチンスキー

11Aug.'09 DVD
★★★★☆

ハネケの作品はなんとなく避けていた。
心して観ないとココロを壊されると思い込んでたから(笑)
実は『〜U.S.A.』の方を先に観てしまったので、
こちらはかなり客観的に観ることができた。
さすがに怖いのは怖かったけど、 思ったほどじゃなかった。

で、何がこんなに不快で不愉快なんだろう。
なんか神経に障る、癪に障る、癇に障るのだ。

若者たちは一見は悪者にはみえない。
どちらかといえば下手に出て、
にこにこしている印象。
そんな彼らに対して、
自分たちの方が上という心理がどこかに働く。
簡単に若者を家の中に入れてしまったのも、
若者が卵を落としてしまったのも、
ケイタイが流しに落ちてしまったのも、
実はアナのちょっとした心のスキだったり、
奢りだったり、が引き起こしていることだ。
不親切に思われたくないから親切を装うけど、
親身にはなれずに、
中途半端な態度から起こっていることだ。
日常生活で誰でもしてしまいがちなことだし、
ひとつひとつは小さなことで、
取り立ててとやかく思うほどのことでもない。
だけど、重なるとイライラにつながる。
アナは無意識にそれを若者のせいにしていたけど、
若者を外で待たせておいて、
卵は包んで、落とさないような状態にして渡して、
ケイタイは流しの淵に置かなければ、
起こってなかったことかもしれない。
若者に対してイラつきながら、
ちゃんとしてあげればよかったと思う部分も、
どこかにあったかもしれない。
いい加減なことをしてしまってせいで、
新たなイライラを生んでしまった。
観客はアナのスキに気がついて、
「ほら、いわんこっちゃない」とイライラする。
いろんなイライラが膨らんで、充満してしまう。
ゲオルクはそんなイライラを感じながら、
また自分も無性にイライラしてしまって、
思わず若者を引っ叩いてしまう。
そしてそれを大義名分にして、
若者たちは家族を執拗にいたぶり始める。。。
途端に若者たちのにこにこした顔が、
この上なく薄気味悪くなる。
イライラに比例して、薄ら寒いものを感じ始める。

直接的な暴力シーンはほとんどない。
暴力が行われる時はカメラは違うものを写している。
でもその暴力の音だけははっきりと聞こえる。
こんな時の人間の想像力の豊かなことといったら、、、
どんな惨劇の映像を見せられるより、
悲惨な映像を思い浮かべてしまう。
ハネケは怖さを表現する天才だと思った。

救われないといえば、救われない映画だ。
けれど、こうなってはじめて、
この家族に人間の縮図のようなものを見たような気がした。
根拠もなしにココロを許して簡単に信用するのも人間なら、
他人と比べて、少しでも上だと思えば傲慢になるのも人間、
どうすることもできない状況なのにあきらめないのも人間だし、
敵ができたときに家族が結束する力を持つのも、人間なのだ。
ゲオルクがアナを逃がすときにいった台詞だけには、
救われた。

家族側に感情移入していると、 パウロに呼ばれて、
知らない間にゲームをする側になってて、
でも気持ちはなんとか家族を助けたいのに、
またパウロに呼びかけられて物語の外に放り出される。
その意図はわからないけど、
薄っぺらな感傷に浸るなといわれているような、、、
とことん負の要素しかない後味の悪い映画にしたかったのか。
その徹底ぶりに、そのこだわりに、
脱帽。。。
(2009.8.13)