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2011-01-10

パリ、テキサス

 1984年
フランス/西ドイツ
監督:ヴィム・ヴェンダース 脚本:サム・シェパード 
撮影:ロビー・ミュラー 音楽:ライ・クーダー
出演:ハリー・ディーン・スタントン/ナスターシャ・キンスキー/ディーン・ストックウェル/オロール・クレマン/ハンター・カーソン/ベルンハルト・ヴィッキ

26Nov.'10 早稲田松竹
★★★★☆

はじめてこの映画を観た時の感動は、今でも覚えている。
こんなにかっこよくて、こんなに切ない、
理屈じゃないんだよって、この空気感なら、
なんでも受け入れられた。

なのに20年近くたった、今改めて観たら、
うーん、なんだか、すごくアメリカっぽくて、、、
そのアメリカ臭さがハナについてしまった。
そりゃ、テキサスが舞台なんだし、
アメリカの俳優が出てるんだから、当然で、
そんなこと思う方がどうかしてる。それはわかってる。

近年、ヴェンダースの映画をいくつか観たせいなのか、
より、ヴェンダースにはまっているのかも。
『パリ・テキサス』は他のヴェンダース映画より、
わかりやすいし、観やすい。
だから余計につまんないことが気になっちゃったのかも。。。
とはいえ、ギターの音色にしろ、
テキサスのランドスケープにしろ、
ヴェンダース色は炸裂してる。
この映画に不満なんて、ホントないんだけど。
なんだろうな。
まあ、次に観たら、また違ってるかも。
気まぐれなので、ね。

主人公はサム・シェパードじゃなくて、ホントよかったと思う。
ナスターシャ・キンスキーは雰囲気あるなぁ。
(2010.12.28)

ベルリン・天使の詩

1987年
西ドイツ/フランス
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ブルーノ・ガンツ/ソルヴェイグ・ドマルタン/オットー・ザンダー/クルト・ボウワ/ピーター・フォーク/ラジョス・コヴァーチ

26Nov.'10 早稲田松竹
★★★★★

なつかしいなぁ。
この映画でワタシの映画観が一変した。
それまではハリウッドものしか観てなかった。
映画にこんな世界があるんだって、知った。
それ以来、映画の虜になった。
そういう意味で、ワタシにとってかけがえのない映画。

20年以上もたって、改めて観ても、
全然色褪せてない。
やっぱり、いい。
導入の思わせぶりな詩といい、
モノクロとカラーの映像といい、
物語の構成といい、
で、図書館を天使のたまり場にしてたり、、、
刑事コロンボ?役の俳優役がキャストされてたり、、、
ヴェンダースならではの、粋なひねりが満載。
ちょっと間違えれば、
ありがちなあざとさになりかねないような演出が
すごく自然に繰り広げられている。

天使も人間の世界がいいって思うんだなぁ。
ま、天使にもよるんだろうけど。
でも雲の上から眺めてるだけで何もできないのよりは、
しんどくても地を這っている方がおもしろいよ。

ダミエルの選択にすごく共感した。
親近感を覚えた。

そして、今はなきベルリンの壁が。
統一前のドイツ、その激動を予感させながら、
それとはよそに、天使の眼差しが柔らかく優しい。
大きなものに包まれている、
安心感があるのはその眼差しのせいかな。

やっぱり、好きだ。
この映画に出会って、よかった。
(2010.12.28)

2010-09-07

都会のアリス


1973年
西ドイツ
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
出演:リュディガー・フォーグラー/イェラ・ロットレンダー/リザ・クロイツァー

04Sep.'10 新文芸座
★★★★★

この、だらり、だらりと続く感じ。
これぞ、ヴェンダース。
いつまでこの調子が続くんだろう、、、
気が遠くなって、飽きるんだけど、
その飽きたのを通り越すと、
なかなか味があるってことに気がつく。

ヴェンダースの中では、この映画は観やすいと思う。
とりあえずの目的がはっきりしてるし、
ストーリーもあるから。

でも、それにしても、
アリスが出てくるまでが、長過ぎるよ。
フィリップが写真に納得がいかないのとか、
文章が書けなくて仕事にならないのとか、
どうでもいいじゃんって、思うけど、
ヴェンダース的には必要なんだろうな。
で、このフィリップも、ぐだぐだのどうしようもない奴で、
それも重なって、いつまでたっても本題にも入ろうとせず、
だらり、だらりしてるのが、
だんだん心地よくさえなってくる。

ギターのフレーズが同じ旋律でずっと、続く。
これも、このだらだら感を醸しだしてるんだけど、
これが、また切ない。なんかそわそわする。
で、またしつこいよなぁってぐらい、ずっと、続く。
でも、フレーズがしっかりしてるからか、
ずっと、続いても、そんなにイヤじゃない。
お、っと思わせておいて、えー?ってなっても、
ま、いっか、って、最後には思わせられちゃう。
だから、ヴェンダースの映画をキライにはなれない。

で、こんなだらだらした中で、ぐだぐだしてるくせに、
アリスとの関わり方が、妙に微笑ましかったりするから、
なんだか、きゅんときちゃう。
海での悪口の言い合いっこや、証明写真や、、、
なんか、いい。羨ましいぐらい。
いい男じゃんって、ちょっと見直したりもする。
ぐだぐだ、なのに。それともぐだぐだ、だから?

結局、おばあちゃんのうちは見つからず、
おばあちゃんにも会えず、目的は何も達成しない。
そんなことですか、ってことで終わるけど、
それも、この映画なら、ありって思える。
だらり、だらりと、「映画なんて、そんなもんさ」
って、感じがなんともいえずにたまらない。

写真をポラロイドで撮ってたりして、
ありがちだし、なんかあざといなぁって、
思うところもないわけじゃない。
でも、このだらり、だらりはすごく正直で、
そのまんまが、映し出されてると思う。
だから他のことは、許せちゃうのだと思う。

2010-06-23

ニコ・イコン

1996年 
ドイツ
監督:スザンネ・オフテリンガー
出演:ニコ/ジャクソン・ブラウン/ジョン・ケイル/クリスチャン・アーロン・ブロング/ニコ・パパタキス/ポール・モリセイ/ビリー・ネイム/ビバ/ティナ・オーモン/アリ・ブロング/エディス・ブロング/ダニー・フィールズ/カルロス・ド・マルドナド/ジョナス・メカス/スターリング・モリソン/ルツ・ウルブリッシュ/アラン・ウィズヘルマ・ウォルフ/ジェームズ・ヤング

26Aug.'09 DVD
★★★★☆

あまりにも奇異な人生。
傷口にさらに塩をぬり込むような痛々しい人生。
あまりにエキセントリックで唖然としてしまった。
ここまで悉く自分のアイデンティティを否定するって、、、

本名がキライ。
ドイツ人がキライ。
美しいのがイヤ。
モデルがイヤ。

否定しかない。
ひとつひとつ壊していく人生。

モデルの頃のニコはホントにかわいい。
人々がうらやむものを何でももっていたのに、
あっさりと捨てる。
そしてなるべくしてヘロイン中毒になり、破滅へと彷徨う。
ヘロインのせいであの美しいニコは面影すらなくなり、
醜くなっていたが、ニコ自身はその醜い自分に満足だった。

ニコは自分の意志とは関係なく、
纏っていなくてはならない、
厭でもどうすることもできない、
本名や出身や美貌という鎧から抜け出したかった。
これを纏っていることが、彼女には地獄だった。
抜け出すためなら、クスリ漬けになっても、
精神病棟に行ったり来たりになっても、
彼女にとってはそれが自由だった。
ニコは純粋すぎたのだと思う。
 
ニコに関わりのある人物がそれぞれニコについて語る。
ニコの人間像とその人生が浮き彫りになっていく。
映像はアーティスティックで見応えがある。
ニコの独特な歌声が映画を通して聞ける。
ニコを知らなくても、ロック好き、ファッション好き、
ウォホール好きだったら、興味深く観られると思う。
 (2009.8.28)

2010-06-18

ヒトラーの贋札

2006年 
ドイツ・オーストラリア
監督・脚本:ステファン・ルツォヴィッキー
出演:カール・マルコヴィクス/アウグスト・ディール/デーヴィト・シュトリーゾフ/アウグスト・ツィルナー/マルティン・ブラムバッハ

31Jun.'08 早稲田松竹にて
★★★★★

究極のジレンマと矛盾の贋札づくり。
「今日の銃殺より明日のガス室」というサリーの台詞。
何が正義なのか、、、
正しいことなんて収容所では虚しいだけだ。

壁一枚向うでは日々、銃殺が行われている。
ポンド紙幣の贋札の成功のご褒美にピンポン台が贈られる。
そんなところでどうしてピンポンなど楽しめるのだろう。
贋札の技術者たちの待遇は収容所と思えないほどいいのだが、
こういうことが彼らの神経を逆なでしてじりじりと追いつめる。

カール・マルコヴィクスの淡々とした演技がすばらしかった。
眼孔にいつも力が入ってる感じがせつなかった。
禿げてても艶っぽいし。

贋札や偽パスポートの偽造の細かな作業や道具にも
興味をそそられる。
やっちゃいけないことって、覗きたくなる。
けど、命を賭けた贋札づくりだからか、妙に緊張した。
最後までぴーんと張りつめたものの中で、
無理難題を押し付けられたりしないかとそわそわしながら、
観ていた。
(2008.6.5)

いのちの食べかた

2005年 
ドイツ・オーストラリア
監督:ニコラウス・ゲイハルター
脚本:ウォルフガング・ヴィダーホーファー/ニコラウス・ゲイハルター

24Feb.'08 イメージフォーラムにて
★★★★★

わかっていたはずだった。
目を叛けない覚悟があったはずだった。
なのに現実をみせつけられ、
動揺しているどうにもだらしのない自分を
思い知らされてしまった。

ワタシは同じ形の生き物が
大量にうようよしているというのがどうしても苦手だ。
うようよが不気味で仕方がない。
異常気象のせいなどでトンポやセミのが大量発生するとか、
カラスの大群とか、
都会のビルに潜んでいるネズミの群れとか。
おんなじ制服の何千人にもなる軍隊とか、、、

音楽もなく、ナレーションもなく、
映像だけが永遠に続く。
たまごもひよこもにわとりも、
どのシーンでもうようよいっぱいいる映像。
果てしなくいっぱいいる。
しかもにわとりやぶたは
同じぐらいの大きさで同じ向きに並んでいる。
それが全部オートメーション化されている。
そこにいる人間はオートメーション的に作業している。
彼らは何の感情も見せず、淡々と作業をする。
「いのち」を扱っているという感傷などもつはずもない。
とことん合理的だ。
そして、その合理主義で機械的に作られたもので、
ワタシたちも作られていくというわけである。 

この合理的という現実をみせつけられた92分。
その現実に目眩がし、震えさえ感じた。
ここでとりあげられているものに
「いのち」をほとんど感じられなかった。
合理性を求めているのだ。
ここで働く人々がもののように扱っても当然のことだ。
何も間違っていない。

ところが、である。
うしは種付けさえこの合理主義でおこなわれ、
最初から人間の食用としていのちを授かり育てられる。
そんなうしでも、最期に機械に押し込まれるのを厭がった。
それが「いのち」の本能ってものだろう。
そんな一面もみることができた。

あのうしのつぶらな目が切なくて、忘れられない。
でもワタシは生きるために「いのち」をいただく。
いつか土に還るためにいただく。
だったら、きちんと向きあっていただきたい。
そのことを身にしみて感じた。

 (2008.2.29)

4分間のピアニスト

2006年 
ドイツ
監督・脚本:クリス・クラウス
出演:ハンナー・ヘルツシュプルング/モニカ・ブライブトロイ/スヴェン・ピッピッヒ/リッキー・ミューラー/ヤスミン・タバタバイ



12Dec.'07 シネスイッチ銀座にて
★★★★☆

映画が始まって、
光の感じがまさにドイツを物語っていて、
きっと好きな映画だと思った。

才能って、凄まじい。
周りをどこまでも傷つけないわけにはいかない。
でもワタシはそんな才能はすごいなぁと思うだけ。
さして興味もない。

それよりもそんな才能に
翻弄される老女の方が興味深かった。
彼女をここまで突き動かせるエネルギーの凄み。
まるい眼鏡の奥で何をかをいわんとしている眼光。
聴いてしまったら、
もう放っておくわけにはいかない、
彼女の意志。その使命。そして愛情。

ただ話としては、
欲張りすぎだよな感は否めない。
ナチス、同性愛、はなくてもいいテーマなのでは。
ジェニーの才能を軸にその生い立ちがメインで、
老女は気難しい厳しい先生で、
その苦悩が描かれていれば、
それで満足できたと思う。
 (2007.12.14)

善き人のためのソナタ

2006年 
ドイツ
監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 
音楽:ガブリエル・ヤレド出演:ウルリッヒ・ミューエ/マルティナ・ゲデック/セバスチャン・コッホ

07Feb.'08 目黒シネマにて
★★★★★

いつ何時も背筋がしゃんとしていて、寡黙で一切無駄がなく、
でも眼孔だけがどこまでも深く鋭い。
非情なまでに任務を遂行する大尉。
ロボットのように国家に仕えていたはずが、
ソナタを聴いてしまった。
彼にも人間の血が流れていたのだ。

タイプライターの字がこれほどまで、妖しく艶っぽいなんて。
重い空気をずっと抱えながら、
密かにそうせざるを得ない喜びにほっこりするものを感じた。

昼のシーンがないわけではないのに、
なんだか仄暗い印象。だからなのか、
最後のほんのちょっと微笑んだ顔がすごく明るく見えた。
 (2008.2.8)