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2010-08-04

ぼくの伯父さんの休暇

1952年
フランス
監督:ジャック・タチ
出演:ジャック・タチ/ナタリー・パスコー/ルイ・ペロー/ヴァレンティーヌ・キャマックス/リュシアン・フレジ

31Jul.'10 新文芸座
★★★★★

やっぱり、ユロ伯父さんは無口で無表情。
それでいて、まわりと噛み合ない行動をするので、
ドタバタばかり巻き起こす。
いつもひとりでいて誰と話すでもなく、
その存在をゼロにしようとしてるのに、
存在感はマックス100になってる。

まわりはユロ伯父さんにびっくりさせられたり、
鬱陶しがったりはするものの、
でもひとつひとつはたいしたことじゃないので、
そんなに怒る人もなく、、、
いつの間にかユロ伯父さんを認めてたり、
好きになってたりする。

タチの映画って、コメディの位置づけだったんだと、
今頃、気づいた。というか、知った。
確かにパントマイムの手法でユーモアを表現してる。
チャプリンやキートンを思い出すのもわかる。
で、笑いとしては、古くさいのも当然だと思う。
だって50年も前の映画だし。

ユロ伯父さんは無口で無表情でも、
人をけなしたり、あざけたりしない。
そういうことで笑わせようとしていない。
だから、ほっとできるんだと思う。

ワタシはくすって笑えれば、それでよくて、
ユロ伯父さんのまわりの人も、
ワタシが観ている映画館の観客も、
そこにいるみんなが、
少しでもあったかい気持ちになれれば、
観た甲斐があったと思える、
それがタチの映画の良さだと思う。

がははと大笑いできる映画でも、
めちゃくちゃドキドキする映画でも
涙がぽろぽろこぼれる映画でもないけど、
でも、どこか何かに響くものがある。
だから、何度も観たくなるんだと思う。

2010-06-23

赤い風船

1956年 
フランス
監督:アルベール・ラモリス
出演:パスカル・ラモリス/サビーヌ・ラモリス/ジョルジュ・セリエ/ヴラディミール・ポポフ

16Feb.'09 早稲田松竹にて
★★★★★

パリの街の色が抑えられていて、
そこに赤い風船がとても鮮やかに映えていた。
風船が少年に捕まえられるのはいやだけど、
でも後ろについていくのが、微笑ましかった。

『白い馬』と同様、こちらも少年と風船の友情物語。
風船のためにみるみる強くなっていく少年。すごい。
で、ものごとにつきものの儚さというか、
ちょっとおおげさだけど、無常観も、、、
でも終わったときに、そんなに悲愴感はなかった。
 カラフルな風船いっぱいの風景は、
気持ちを晴れやかにするから。

少年のスウェット姿がめちゃくちゃかわいかった。
(2009.6.8)

白い馬

1953年 
フランス
監督:アルベール・ラモリス
出演:アラン・エムリー/ローラン・ロッシュ/フランソワ・プリエ/パスカル・ラモリス

16Feb.'09 早稲田松竹にて
★★★★★

この感動を伝えたくても、
何か言葉にすると陳腐にしかならない。
ホントにホントに美しいとしかいえない。
少年も白い馬もその友情も、物語もモノクロの映像も。
あまりに美しすぎて、放心状態で観ていた。

少年と馬との信頼関係やその絆を踏みにじることは、
誰にもできない。
シンプルなだけに、胸の奥にずんと突き刺さるものは大きい。
 (2009.6.7)

2010-06-20

大人は判ってくれない

1959年 
フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャン・ピエール・レオ/クレール・モーリエ/アルベール・レミ/ギイ・ドコンブル

12Apr.'09 新文芸座にて
★★★★★

何度観ても思うんだけど、
アントワーヌはそんなに悪い子なのかな。
映画の雰囲気なのか、
アントワーヌがぎすぎすしてないというか、
だからなのかもしれないけど、
鑑別所行きには唐突な違和感がある。
ちょっと間が悪いというか要領が悪いだけじゃない。
ホントに子どもらしい子だと思う。
そりゃ、母親や義父や先生には、
それなりに葛藤もあって反抗的な態度だったりもするけど、
でもそれはそれを受け入れられない大人の側の問題でしょ。
すごく不条理を感じる。

でもだからといって、
じゃぁ可哀想なだけの少年なのかといえば、
そうでもなく結構たくましく、家出を繰り返している。
そこにちょっとした冒険があってスリリングを感じるし、
なんかわくわくするので映画に惹き込まれてしまう。

最後まで目を離させず、メッセージもちゃんと伝えてる。
今更ながらに、いい映画だと思う。
 (2009.5.10)

ぼくの伯父さん

1958年 
フランス
監督:ジャック・タチ
出演:ジャック・タチ/ジャン・ピエール・ゾラ/アドリエンヌ・セルヴァンチ/アラン・ベクール

 01Jun.'09 DVD
★★★★★

大好きな映画。
この映画を観ると、なんかほっとする。

ユロ伯父さん。 なんともいえない愛おしいキャラクター。
伯父さんはしゃべらなくていい。
存在だけでみんなを幸せにするから。 笑わせてくれるから。

妹夫婦とそのスタイリッシュな家と庭。
皮肉と滑稽さでいっぱいだけど、
この映画だと、なんか憎めない。
ユーモアがあちこちにあるから、
観てる方はおおらかになってるし。
隣の変な帽子をかぶってくるおばさんだって、
ちょっとだけ「ばっかじゃないの」と思っても、
ま、いっかって気持ちになる。

伯父さん、今日もまた、 窓に光を反射させて、
ことりの囀りを聴いているのかな。
(2009.6.2)

肉体の冠

1951年 
フランス
監督:ジャック・ベッケル
出演:シモーヌ・シニョレ/セルジュ・レジアニ/クロード・ドーファン/レイモン・ビュシェール

20Oct.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★☆☆

シモーヌ・シニョレがアップになるたびに、
プロマイド写真みたいなライティングにいちいちなるのが、
気になって仕方がなかった。
スターはこういうふうにしなくちゃってのがあったのかな。
時代を感じさせるところがいっぱいあった。

シモーヌ・シリョレの豊満な肉体と豊かな金髪には,
ドギマギしちゃった。
気っ風があって、確かにかっこよかった。
それにしても物語は救われなかった。
不条理を感じてしまった。
(2008.10.22)

2010-06-19

崖

1955年 
イタリア・フランス
監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ 
脚本:トゥリオ・ピネッリ/エンニオ・フライアーノ
出演:ブロデリック・クロフォード/リチャード・ベースハート/フランコ・ファブリッツィ/ジュリエッタ・マシーナ/ロレッラ・デ・ルーカ



31Jul.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★★★

泥棒の風上にも置けない詐欺師のアウグスト。
相手が貧乏だろうが何だろうが、
姑息な手口で金を巻き上げる。
同情の余地すらないどうしようもない奴。
しかしそんな悪行三昧のアウグストも
最後の最後のところで非情になれず
ココロを揺さぶられてしまったのだ。

観ている間は最低な奴だと見下しているのに、
観終わった時には
切なく哀しく愛おしい存在になっている。

人間の弱さや猾い部分を突きつけながら、
実はすごく温かいものを投げかけている。
不器用だけど人間もまんざらじゃないと思わせてくれる。
 (2008.8.15)

道

1954年 
イタリア
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:アンソニー・クイン/ジュリエッタ・マシーナ/リチャード・ベースハート

18Jul.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★★★

それでも道はつづいていく、、、

ジュルソミーナもザンパノも不器用で、
ほんのちょっと歩み寄れれば
お互いもうちょっと楽になるのになぁと思いながら、
なかなかそれがむずかしかった。
でも愛情って、そんなものなのかもとふと思った。
旅を共にしなくちゃならなくなったいきさつがなんであれ、
自分たちも気がつかないうちに、
いつの間にか相手がなくてはならない存在になっている。
知らないうちに相手を思いやる気持ちが芽生えている。
意識していないからこそ、
どうしようもないもどかしさを感じてしまう。

かわいくてせつなくて、
健気で愛くるしいジェルソミーナ。
ジュリエッタ・マシーナにしかジェルソミーナはできない。
ぶっきらぼうで粗暴で、ろくでなしのザンパノ。
アンソニー・クインにしかザンパノはできない。
そして、
フェリーニにしか撮ることができない映画なのだと思った。
(2008.8.4)

さすらい

1957年 
イタリア
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:スティーヴ・コクラン/アリダ・ウ゛ァリ/ドリアン・グレイ/ヘッツゥ・ブレア/リン・ショウ/ガブリエラ・バロッタ

16Aug.'09 DVD
★★★★☆

荒涼とした北イタリアの風景の切りとり方が、
やっぱりアントニオーニだ。
何にもない寒々しい風景で、しかもモノクロなのに、
でもモノクロだからこそなのか、映像に色気がある。
ただの風景が、ただじゃなくなっている。

アルドが最初に登場するのが、
工場の螺旋階段の最上階。
これが、あり得ない構図で撮られている。
アルドがかなり身を乗り出して
イルマに声をかけているのを、
それより上からほとんど真俯瞰で撮っているのだが、
観ていて、え、大丈夫なのって、
ちょっとはらはらする。
真下を見下ろすことになるので、
高所恐怖症の人はきっと怖いと思う。
ここではさらっと、特に取り立てることなく、
アルドは階段を事も無げに降りていく。
今思えば、これは伏線だったんだなぁ。

工場のような無機質なものに、意味をもたすというか、
人間を反映させるのもアントニオーニならでは。
実に巧いと思う。
最初の工場のシーンは従業員もたくさんいるからか、
意気揚々として活気があった。
でも最後のシーンではアルドとイルマしかいないし、
冷えきっていて、荒廃しているような気さえした。
まるでアルドの心情そのものだ。
工場を起点と終点にして、さすらいの旅の間、
満たされない虚無感を抱えたままのアルドの、
移ろいでいく姿をあからさまに映し出していた。

そんな旅の中で、ガソリンスタンドのおじいさんと
ロジーナの仲が良かったのが、
ほのぼのと、気を緩められるひとときだった。

単音の楽器を組み合わせたような素朴な音楽が、
いい。 すごく好き。

それにしてもイタリアの女たちはみんな、
ストレートで、気が強いなぁ。
(2009.8.17)

2010-06-08

十二人の怒れる男

1957年 
アメリカ
監督:シドリー・ルメット
出演:ヘンリー・フォンダ/リー・J・コッブ/エド・ベグリー/E・G・マーシャル/ジャック・ウォーデン/マーティン・バルサム/ジョン・フィードラー/ジャック・クラッグマン/エドワード・ビンズ/ジョセフ・スウィニー/ジョージ・ヴォスコヴェク/ロバート・ウェバー

19Jul.'09 DVD
★★★☆☆

人が人を裁く。。。
むずかしい。

はじめに違和感を覚えたのは、白人しかいないこと。
しかも男性だけ(タイトルも男だった、、、)
50年も前のアメリカじゃ、
公民権運動やウーマンリブの前だから、
当たり前といえば当たり前なのか。
スラム街出身や移民の人がいただけでも、
画期的なことだったのかも。

11人が有罪という立場の中、
ひとりだけ無罪を主張する男(ヘンリー・フォンダ)
 その勇気には敬服する。

有罪側はほとんどが感情で動かされていたり、
または早く終わらせたいだけで多数意見になびいていたりで、
とうてい議論と呼べるようなものではない。
それに対して男(ヘンリー・フォンダ)は、
理路整然と無罪を主張する。
そうしていくうちに、ひとり、またひとりと、
無罪へと流れる。

観ていて、なんだか気持ちが悪くなってきた。
ワタシはどちらかといえば死刑には疑問を持っているので、
無罪になるなら、それだけでほっとする立場である。
でもあまりに簡単に意見が変わっていくことに、
またもや違和感を覚えてしまった。
陪審員とは、所詮素人の集まりだ。
有罪側に立っている理由も、
証拠や証言がすべてで、後は感情的なもので、
深く考えて有罪の立場にいるわけではない。
議論の上手い人や冷静な人がちょっとつついただけで、
崩れてしまうような理由でしかない。 
この映画の場合なら、
陪審員がちゃんとした議論をするためには、
有罪側にも相等の論理が必要だったと思う。
無罪になる方だからまだいい。
常識的にも観客も含めてそちらの方に気持ちがいくから。
でも逆だったらと思うと、怖くなる。
実際にもっと判断できない、
むずかしい裁判だったら、、、
男(ヘンリー・フォンダ)は一見正しいように見えるけど、
最後の方はほとんど有無を言わさなくなってた。
有罪側の最後のひとりになった感情的な男は、
無理矢理「無罪」と言ってたように見えた。
言わされているかのようだった。
これって、どうなんだろう。

会議室一室で、12人の男の丁々発止の迫力。
場面はほとんど変わらないのに、全然飽きなかった。
映画として、面白いんだと思う。
力もあるのだと思う。
でもどうしようもない違和感だけは拭いきれなかった。
 (2009.7.22)

2010-06-02

野火

1959年 
日本
監督:市川崑 原作:大岡昇平 脚色:和田夏十 
出演:船越英二/ミッキー・カーチス/月田昌也/杉田康/山茶花究/稲葉義男/星ひかる

22Jul.'08 新文芸座にて
★★★★★

まさに、これが戦争というものだろう。
極限状態の敵は飢えである。
何のためにここにいるのかすらどうでもよくなる。
人間の尊厳などなんの救いになるというのか。
行く宛もなくただ戦地を彷徨う。
ただ、狂気と化していく。

野火の煙に向かう。
「普通に生活している人に会いたい」
唯一の願いだったのだろう。
戦争はそれを許してはくれないのだが。

船越英二。
最近昔の映画を観てるとよく出てきて、
すごい俳優だったんだと認識をあらたにした。
痩せすぎていて、ずっと誰だかわからなかった。
(2008.8.7)

炎上

 1958年 
日本
監督:市川崑 原作:三島由紀夫 脚本:和田夏十/長谷部慶治
出演:市川雷蔵/仲代達矢/中村鴈治郎/浦路洋子/新珠三千代/中村玉緒

19Jul.'08 新文芸座にて
★★★★★

モノクロの炎が妖しく揺らめく。
青年の魂の昇華していくような禁断の美しさ。
目映い煌めきに心を奪われる。
市川雷蔵は艶っぽかった。
吃音で抑圧されているからこそ、
端正な顔立がなお美しい。

中村鴈治郎の一見物わかり良さそうにしていながら、
その裏の奥行きの深さが立ち振る舞いでみえてくるから凄い。
仲代達矢は雷蔵とは真逆の極地の艶を感じた。

驟閣も青年もあまりに脆く儚い。
それゆえに美しいのかもしれない。
(2008.8.6)

日本橋

 1956年 
日本
監督:市川崑 原作:泉鏡花 脚色:和田夏十 
出演:淡島千景/山本富士子/若尾文子/品川隆二/柳永二郎

24Jul.'08 新文芸座にて
★★★☆☆

花街日本橋の景色が美しい。
淡島千景の気っ風のいい姐御っぷりが心地いい。
山本富士子は所作のひとつひとつがきれいで惚れ惚れする。

泉鏡花の小説をちゃんと読むべきだったと思った。
(2008.8.9)

ビルマの竪琴

1956年 
日本
監督:市川崑 原作:竹山道雄 脚色:和田夏十 
出演:安井昌二/三國連太郎/浜村純/内藤武敏/西村晃/春日俊二/北林谷栄/沢村国太郎

22Jul.'08 新文芸座にて
★★★★☆

昔からこの話があまり好きではない。
水島上等兵のとった行動はアタマでは理解できても、
根本のところではどうしても納得できない。
確かに涙ぐましい話だけど。。。

でも映画としての美しさは、
この水島上等兵の純粋さによるものであるのは否めない。
日に日に僧侶然としていく姿は凛々しい。
そして、 竪琴の旋律がカラダ中に沁みわたる。
荒んだ乾いたココロに潤いをもたらす。
降伏後とはいえ、ビルマが戦地であることを忘れてしまう。

三国連太郎の若く精悍で、
しかも優しいまなざしがたまらなくよかった。
(2008.8.7)

氾濫

1959年 
日本
監督:増村保造
出演:佐分利信/沢村貞子/若尾文子/川崎敬三/叶順子/左幸子/中村伸郎

20Apr.'09 DVD
★★★☆☆

ろくでもない人しか出てこない。
ここまで徹底的に金と地位と女(男)で塗り固められれば、
それはそれでお見事だと思う。
まさに欲望は氾濫してた。思いっきり。
でも、なんか期待してたほどじゃなかった。
確かに高度成長期の驕りのせいで、
見失いかけてるものやどうしようもない虚しさは、
浮き彫りになって、リアリティとしての実感はあったと思う。
だけど、なんか盛り上がりがなかった。
登場人物それぞれのえげつなさの羅列になってた。
で、どうにも救われなくて、、、
う〜ん、救っちゃ面白くないのはわかるんだけど。
いつもの増村作品の鬼気迫る感じがあまりなくて、
物足りなかったのかも。
(2009.5.21 )

早春

1956年 
日本
監督・脚本:小津安二郎 脚本:野田高梧
出演:池部良/淡島千景/浦辺粂子/田浦正巳/宮口精二/杉村春子/岸恵子

10Oct.'08 神保町シアターにて
★★★★☆

昔、父親に会社の同僚といくハイキングに、
よく連れて行かれたことを思い出した。
すごくなつかしくなった。
それにしても通勤電車が一緒だというだけで、
仲間になれるなんてちょっとうらやましかったり。
サラリーマンといえどもなんだか牧歌的でいい。
子どものいない倦怠期の夫婦。
夫の浮気。サラリーマンとしての将来の不安。
今でも、だれもが普通にある悩みだろう。
浮気と言うか、不倫と言うか、
カッコつけしぃのスギ(池辺良)がキンギョ(岸恵子)に、
振り回されてるようにしかみえなかった。
昌子(淡島千景)は佇まいのきちんとした妻だった。
だからこそ、気がついちゃうのよ。夫のことはね。
夫の帰りを待つ浴衣姿には惚れ惚れしちゃった。
こんなに艶っぽい女が傍にいるのに、
わかんないなんてね〜 ばかだね。
予定調和ではあるけど、最後はうまくいってよかった。
(2008.10.17)