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2010-11-07

儀式

1971年
日本
監督:大島渚 脚本:田村孟/佐々木守/大島渚 音楽:武満徹
出演:川原崎健三/賀来敦子/佐藤慶/乙羽信子/小山明子/小松方正/渡辺文雄/土屋清/戸浦六宏/中村敦夫/椿隆一/成島有美/大田良明/椿幸弘

06Oct.'10 新文芸座
★★★★★

とかく旧家は儀式が多い。

家族の一員になる儀式。
母親の葬式。
古めかしい家長制度の儀式。
家の体裁を保つがための滑稽な結婚式。
少年が青年になる初体験、、、
これも捉え方次第で儀式?。。。などなど。

家長たるものが全てでありながら、
その古くさい風習をアイロニカルに描きつつ、
妙に艶かしいシーンが印象的。
特に艶かしく感じるのは、
満州男少年が校庭で、地面に耳をつけているところ。
いがぐり頭の柔らかそうな短い髪の毛と透明感のある肌の色、
そしてその悩ましい表情が、なんともそそられる。
少年のいろんなものを感じながらもうまく表現できず、
そのままでいるしかない様から目が離せない。

大人になってもどこかおどおどしている満州男。
対照的にいつも不敵で自信たっぷりの輝道。
何かしらにつけ冷めている律子。
家長制度の鬱屈さに、息がつまりながら、
同じような境遇にいながら、
性格はそれぞれになるんだなと思った。
親の立場とかもあるんだろうけど。


それにしても佐藤慶の存在感に圧倒された。
小山明子はさすがにきれいだなぁ。
白い御御足がこれまた艶かしかった。
それから、妙に落ち着かないけど、
でもなんとも美しい音楽、、、武満徹だったんだ。
何気にすごい映画だ。
(2101.10.20)

愛のコリーダ 2000

1976年
日本
監督・脚本:大島渚 製作:若松孝二
出演:藤竜也/松田英子/中島葵/芹明香/阿部マリ子/殿山泰司/藤ひろ子/白石奈緒美/青木真知子/東祐里子/安田清美/小山明子

02Oct.'10 新文芸座
★★★★★


20代で初めて観た時は、ポルノにしか思えず、
途中でギブアップ。
10年前に完全ノーカット版が上映された時は、
最後まで観るも、意味が分からず、理解できず。
しかしながら、40代の今なら、
吉蔵と定の愚かさや哀れさをも受け入れながら、
この上なく美しい映画だと真に思う。

藤竜也、若いなぁ。
精悍な躯がきれいだなぁと眺めてた。
松田英子の一途な感じに、すごく好感がもてた。
阿部定はいろんな女優がやっているけど、
ワタシには松田英子の阿部定しか、
もはやあり得なくなっている。

戦時中にありながら、
性の快楽に明け暮れている二人。
わざわざ出征のシーンを入れて、
世の中がそんな状況でも、
二人はその欲望に溺れていて、二人をとことん貶めている。
それでもなお、溺れながらも、お互いを思う愛を感じさせる。
結局、究極の結末となるけど、
吉蔵もその瞬間は絶頂だっただろうし、
定もその後の人生にどんな試練があろうとも、
それ以上の幸福感に満ちあふれていただろう。
そして、
108分うちのほとんどが性交渉なのにも関わらず、
不快にならないのは、二人の愛情が、
何の飾り気もなくむき出しのまま、
描かれているからだろう。
(2010.10.21)

2010-09-07

都会のアリス


1973年
西ドイツ
監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース
出演:リュディガー・フォーグラー/イェラ・ロットレンダー/リザ・クロイツァー

04Sep.'10 新文芸座
★★★★★

この、だらり、だらりと続く感じ。
これぞ、ヴェンダース。
いつまでこの調子が続くんだろう、、、
気が遠くなって、飽きるんだけど、
その飽きたのを通り越すと、
なかなか味があるってことに気がつく。

ヴェンダースの中では、この映画は観やすいと思う。
とりあえずの目的がはっきりしてるし、
ストーリーもあるから。

でも、それにしても、
アリスが出てくるまでが、長過ぎるよ。
フィリップが写真に納得がいかないのとか、
文章が書けなくて仕事にならないのとか、
どうでもいいじゃんって、思うけど、
ヴェンダース的には必要なんだろうな。
で、このフィリップも、ぐだぐだのどうしようもない奴で、
それも重なって、いつまでたっても本題にも入ろうとせず、
だらり、だらりしてるのが、
だんだん心地よくさえなってくる。

ギターのフレーズが同じ旋律でずっと、続く。
これも、このだらだら感を醸しだしてるんだけど、
これが、また切ない。なんかそわそわする。
で、またしつこいよなぁってぐらい、ずっと、続く。
でも、フレーズがしっかりしてるからか、
ずっと、続いても、そんなにイヤじゃない。
お、っと思わせておいて、えー?ってなっても、
ま、いっか、って、最後には思わせられちゃう。
だから、ヴェンダースの映画をキライにはなれない。

で、こんなだらだらした中で、ぐだぐだしてるくせに、
アリスとの関わり方が、妙に微笑ましかったりするから、
なんだか、きゅんときちゃう。
海での悪口の言い合いっこや、証明写真や、、、
なんか、いい。羨ましいぐらい。
いい男じゃんって、ちょっと見直したりもする。
ぐだぐだ、なのに。それともぐだぐだ、だから?

結局、おばあちゃんのうちは見つからず、
おばあちゃんにも会えず、目的は何も達成しない。
そんなことですか、ってことで終わるけど、
それも、この映画なら、ありって思える。
だらり、だらりと、「映画なんて、そんなもんさ」
って、感じがなんともいえずにたまらない。

写真をポラロイドで撮ってたりして、
ありがちだし、なんかあざといなぁって、
思うところもないわけじゃない。
でも、このだらり、だらりはすごく正直で、
そのまんまが、映し出されてると思う。
だから他のことは、許せちゃうのだと思う。

2010-08-31

江戸川乱歩の陰獣

1977年
日本
監督:加藤泰 原作:江戸川乱歩
出演:あおい輝彦/香山美子/大友柳太朗/川津祐介/中山仁/仲谷昇/野際陽子/田口久美/加賀まりこ/尾藤イサオ/任田順好/若山富三郎/藤岡琢也/菅井きん/倍賞美津子

28Aug.'10 新文芸座
★★★☆☆

いやいや、悪くはないとは思うんだけど。
なんだろう。何が足りないのか、
何が違うのか。。。

香山美子は艶かしかった。
楚々とした着物姿の虫も殺さぬような顔した女で、
しかし実はとんだ食わせ者だったってのが、
うまく描かれてたと思う。
自分で寒川に相談しておきながら、
寒川が謎解きをしていこうとすると、
ココロここにあらず、我関せず、な感じで、
気持ちはもう、、、違うところにいっちゃってる。。。
その表情になんだかそそられちゃった。

なんだけど、
その肝心要の寒川の謎解きが、、、うーん。
全体的に雰囲気はあるだけに、
ここが棒読みだとちょっとツライ。。。
棒読みというか、一生懸命すぎるというか、
がんばっちゃってるというか、力が入りすぎてるというか、
ヘっ?て思って、ふとこっちが我にかえっちゃったよ。
ここは幻想に漂わさせてほしかった。。。

でも、変に回想シーンとか入れてないところは、
よかったと思う。
ワタシは原作読んでないけど、トリックはよくわかったし。
これ以上説明する必要はないと思う。
あ〜、だからこそ酔わせてほしかった。残念。


あとやっぱり、囲碁のシーンは好き。
直接的に云わずに、何を意味しているのか、
映像と音で怪しく表現してるのは、面白かった。
ちょっと、ぞくぞくしたし。
加藤泰監督は、映像の名手だったのだそう。
だからか。いろいろ駆使してるのは、わかる。
囲碁のシーンは引いたところから、ローアングルだったり、
いきなり目のアップだったり、と、
くるくる変わることで、臨場感というか、
心理的な緊張感が伝わっていいと思った。

けど、どこの場面だったか忘れたけど、
寒川と静子を望遠レンズですごく近くにして、
重なるように見せておきながら、
いきなり標準レンズの画角に切り替わったところがあって、
ここでもまた、ワタシは、はたと我にかえっちゃったのよ。
望遠で、ここまで寄って、これだけピントを合わすには、
光量もそれなりに必要になってくるし、
よほどじゃなければやらなくてもいいと思うんだけど、
この時代の撮り方なのかな。
他の監督の作品とかでも、結構見る。
ワタシにはその良さがわからない。
なんか鼻について、あまり好きじゃない。
ま、それはいいけど、
違和感のある画角の切り替えはどうかと思う。
細かいことで申し訳ないけど、こういうことで、
ぽんと現実に戻されちゃうのよ。
ワタシは乱歩の世界に浸りたくて観てるんだから。

とにかく、ワタシにはあと一歩って感じだった。
全体的な雰囲気と余計なことをしてないところは、
好きだっただけに、なんだかもったいないなって、思う。

2010-08-26

ストーカー

1979年
ソビエト連邦
監督:アンドレイ・タルコフスキー 脚本/原作:アルカージー・ストルガツキー
出演:アレクサンドル・カイダノフスキー/アリーサ・フレインドリフ/アナトリー・ソロニーツィン/ニコライ・グリニコ

21Aug.'10 新文芸座
★★★★★


ずっとセピア色の映像だったのが、
ゾーンに入ったらカラーになった。
落ち着いたいつものタルコフスキーの色だが、
瑞々しい緑がきらきらしていた。
タルコフスキーは水の映像が多いなぁ。
沼とか、廃墟に溜まった水とか、、、
湿った空気にぞくぞくしながら、
何か起こるんじゃないかと気が気でなく、
目が離せないけど、ほとんど変わらない映像に、
意識を失いそうになる。。。

タルコフスキーも一度観ただけでは、なかなか難しい。
眠くなりながらも何度も観ていると、
タルコフスキー独特のパターンに慣れてきて、
段々この世界に惹きこまれるようになる。。。
に、しても眠いけど。

この映画も何度も観てるけど、
いまだにゾーンが何かとか、部屋は何だったのかとか、
ホントのところはまるでわからない。
今回ぼんやり思ったのは、
このストーカー、説教くさいし、お坊さんみたいだなってこと。
ゾーンはあの世までの、仏教なら三途の川みたいな場所で、
希望を叶える部屋ってのがあの世かな、なんて。
ってことはストーカーはあの世への使者。
煩悩の塊のような教授と作家は、
まだあの世に行く資格はなかったというわけ、、、

なんて、原作も読んでないワタシの勝手な解釈だけど、
こうやってイメージできると、
小難しそうでも、実はおとぎ話のようなものかな、
で、楽しめる。単純なワタシはそれで、よし。
解釈はいろいろあっていいと思うし。

それにしても、ラストのコップが動いてるのと、
娘の無表情なアップは意味深だったなぁ。。。
娘はある力をもってる? 神の申し子? なんてね。
こういうところもおとぎ話っぽいなって思う。

惑星ソラリス

1972年
ソビエト連邦
監督:アンドレイ・タルコフスキー 原作:スタニスワフ・レム
出演:ナターリヤ・ボンダルチュク/ドナタス・バニオニス/アナトリー・ソロニーツィン/ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー/ユーリー・ヤルヴェト

21Aug.'10 新文芸座
★★★★★

まいったなぁ。こう来たか。
ラストにはとにかく戦慄を覚えた。
海が美しすぎるから、余計に怖い。
虚構に放り込まれたまま、放心状態。

クリスは現実的で冷徹な男だった。
成果のでないソラリスの研究を今後どうするかで、
クリスはソラリスへ出向く。
しかし、宇宙ステーションは事情が変わっていた。
ソラリスの海は人間が潜在的に抱えているものを、
物質化してしまうのだ。
クリスの妻ハリーは10年前に自殺していて、
クリスは心の奥底に追いやりながらも忘れられずにいた。
目を覚ますと、死んだはずのハリーがそこにいた。
自分の感情の物質化だと知り、殺すが、
殺しても殺してもハリーは姿を現す。
クリスが忘れられない限り、ハリーは物質化される。
結局、偽りだとわかっていながらも、
クリスは虚像のハリーを愛するようになる。。。

70年代のソ連。
外へ外へと、ついに宇宙へと意識が高まっていた時代。
この映画はSFで、宇宙といった究極の外を背景にしながら、
実は人間の自己、つまり究極の内側を追求している。
その対比が、興味深かった。

途中、首都高が映し出され、
「なんか見たことあるなぁ」って、
ぼんやりしてたら、東京だった。
特に「東京」に意味はなかったけど、
首都高って、未来都市のイメージなんだな。
狭いところに道が何層にもなってるところが、
描きやすかったのかな。

フィルムが劣化していてノイズがひどかったけど、
映像はなんとも美しい。他に言葉がないほど、美しい。

美しい映像に、
美しいハリー、
そして、美しい海。
美しいものばかりで、だから何ともいいようもなく、
そわそわする。訳もわからず、しみじみ怖い。

つまるところ、現実も虚構も自己の中にあって、
うかうかしてると、虚構に呑み込まれる???
うーーー、怖いよう。

2010-06-24

ミツバチのささやき

1973年 
スペイン
監督:ビクトル・エリセ
出演:アナ・トレント/イサベル・テリェリア/フェルナンド・フェルナン・ゴメス/テレサ・ジンベラ

07Nov.'09 早稲田松竹
★★★★★

スペイン内戦を時代背景にしているせいか、
どこか緊張感を抱えながら、 静かに静かに、
ゆっくりした時間が流れていく。

アナの黒目の清らかなこと。
まっすぐで純粋な視線なだけに、
ココロまで見透かされそうでドギマギしちゃう。

ミツバチの羽音、
姉妹のベッドでのささやき声、
風の音、機関車の音、、、

蜂の巣、窓、
懐中時計、毒きのこ、
フランケンシュタイン、
影絵、黒猫、焚き火、
精霊、井戸、廃屋、脱走兵、
りんご、手紙、、、

キーワードが多いなぁ。
どこを切りとっても、美しすぎる抒情詩。
そわそわさせられながらも、
何かを感じないわけにはいかなくなる。

アナは意識の中で現実と幻想をいったりきたりしながら、
少しずつ変わっていく。
こうして大きくなっていくんだなと思った。
(2009.11.21)

2010-06-23

インテリア

1978年 
アメリカ
監督:ウディ・アレン
出演:クリスティン・グリフィス/メアリー・ベス・ハート/リチャード・ジョーダン/ダイアン・キートン/E・G・マーシャル/ジェラルディン・ペイジ/モーリン・スティプルトン

29Aug.'09 DVD
★★★★★

今まで観たウディ作品とは違っていた。
家族のあり方をすごくシリアスに、ストレートに描いている。
しかも普遍的でありながら、深く緻密である。見事だと思う。

インテリアデザイナーの母親イブ。
家の中は洗練されたインテリアで完璧。
花瓶ひとつでも、不調和は許さない。
そのイブが築いてきた「家族」も洗練され、完璧を装っていた。
その家族の会話といえば、小難しい政治や芸術論。
表面的にはインテリ然として上品に見える。
しかし、その完璧はイブの価値観の中でしかなく、
この家族にはあまりに脆く、崩れるのも難くはなかった。

3人の娘たちのクリエイティブな職業と才能。
それゆえの姉妹の間の嫉妬や葛藤。
長女レナータはとりあえず才能がある風ではあるが、
それも実は編集者に気に入られているだけだった。

そんな中、突然娘たちの父アーサーが別居をしたいと言い、
イブはその現実を受け入れられず、
自分を立することができなくなる。

アーサーの再婚相手のパール。
最初は無菌状態の家族に
異物が入り込んだといった具合だった。
しかし、パールの生命力は際立って見えて、
気がつけば、洗練されたインテリアは無機質に色褪せていた。
パールは普通のおばさんで、人間臭くて生々しい。
この家族が見せないように隠していた感情を、
躊躇なくあらわにしている。
教養は感じられないけど、愛情豊か。
娘たちは見下しながらも、彼女から目が離せず、
今は受け入れられずにいても、
やがて彼女の存在が何なのかに気づいていくだろう。

色を抑えた、海辺の映像が印象的だった。
(2009.8.29)

2010-06-22

モン・パリ

1973年 
フランス=イタリア
監督:ジャック・ドゥミー 
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/マルチェロ・マストロヤンニ/ミシュリーヌ・プレール/マリサ・パバン/クロード・メルキ/アンドレ・ファルコン/モーリス・ビロー/アリス・サブリッチ/レイモン・ジェローム/バンジャマン・ルグラン/ミレーユ・マチュー

24Jul.'09 DVD
★★★★☆

 マストロヤンニが妊娠!!??

インチキ産科医がろくろく調べずに、
妊娠だと診断した上に発表までしちゃうから、
新聞には載っちゃうし、
CM出演の依頼はくるしで、 大騒ぎに。。。

それにしても、男が妊娠なんてあり得ない話を、
みんながみんな、信じちゃうってのが、笑える。
で、「これで女の気持ちがわかるわよ」なんて、
男女平等とかを真剣に語っちゃってるんだもん、おかしくて。
マルコ(マストロヤンニ)もまんざらじゃなさそうだし。

ま、結局オチともいえないオチで落ち着くんだけど、
だれも傷ついてないし、その間、この話でもちきりで、
なんか、わいわい、わくわく、してたじゃない。
みんな幸せそうだったし、こういうのはありだと思う。
ま、エイプリルフールのネタにするぐらいなら、
許されるかな(笑)

さすが、ジャック・ドゥミ。色が溢れてる。
しかも原色が、すごく微妙なバランスであちこちにあって、
それだけでも楽しくなってくる。
ドヌーヴはめちゃくちゃ、かわいい。
お嬢様、お嬢様、してなくて、とても等身大なので、
なんだかとてものびのびしてた。
すごくいいと思う。
 (2009.7.25)

2010-06-20

逃げ去る恋

1978年 
フランス
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャン=ピエール・レオー/マリー=フランス・ピジエ/クロード・ジャド

12Apr.'09 新文芸座にて
★★★★☆

前のドワネルシリーズ4話の回想が多くて、
『大人は判ってくれない』の映像なんか観ちゃうと、
アントワーヌも大きくなったねぇって、
なんだか母親のような気分になった。

ずっとアントワーヌを観てきたので、愛着があるからか、
こういうのもありだなぁっていう素直な感想。
『二十歳の恋』ではコレットをひどいなぁと思ってたけど、
コレットにしてみたら、アントワーヌの方がひどかったわけで。
それから、
『大人は判ってない』では母親もひどいなぁって思ってたけど、
でも彼女には彼女の人生もあったわけで。
お墓参りもちゃんとできたし。
いろんなフォローができてる。
それぞれに許す気持ちになってる。
これぞ、完結編。

で、アントワーヌはサビーヌとのこれからがあるわけで。
アントワーヌのおかげで、
温かい気持ちになれる映画5本分の時間を過ごすことができた。
(2009.5.17)

家庭

1970年 
フランス・イタリア
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ジャン・ピエール・レオ/クロード・ジャド/ダニエル・チェカルディ /マツモトヒロコ

12Apr.'09 新文芸座にて
★★★★★

やっぱりアントワーヌは、とことんアントワーヌだ。

夫としても父親としてもささやかながら幸せにやってたのに。
視界に強烈なものがあると、
磁石のように引き寄せられちゃう癖は相変わらずだ。
フランス人のアントワーヌにしたら、
着物姿のキョーコさんはそりゃ刺激的だったでしょう。
別れる引鉄は確かにキョーコさんでしょうが、
クリスティーヌとの行き違いが
少しずつ見え出していたからなぁ。
でも最終的に何が一番大切なのか、
アントワーヌはわかってたと思うんだけど、
でもうまくいかないなぁ。

隣の部屋の夫婦が乗り越えてきた道を、
アントワーヌとクリスティーヌも乗り越えなくちゃならない、
そんな暗示めいた最後のシーンはちょっと感慨深かった。

やっぱり、ところどころくすって笑えるところ、
そして映画の雰囲気とアントワーヌの憎めない言動が、
別れ話もそんなに深刻にならずすましている。
そんなに不幸にならずに救われている。
さすがだ。
(2009.5.17)

愛の嵐

1973年 
イタリア
監督:リリアーナ・カヴァーニ
出演:ダーク・ボガード/シャーロット・ランプリング/フィリップ・ルロワ/ガブリエレ・フェルゼッティ/ジュゼッペ・アドバッティ/イザ・ミランダ/ニノ・ビニャミーニ/アメディオ・アモディオ

27Jun.'09 DVD
★★★★★

シャーロット・ランプリングの目に吸い込まれそうになる。
痩せぎすでほとんど脹らみのない胸。少年のような短い髪。
縋るものなど何もなくすべてを諦めるしかない中で、
唯一、その目だけが意思をもっていた。
穢れのない、美しく尊いものがそこに、見えた。

おぞましい過去を忘れたいはずが、再会してしまったら、
ずるずると惹かれるしかなかった。
理性があれば全くあり得ないことで、
こんなものを愛だなんていいたくないけど、
でもこの二人にとっては、これも愛なのだろう。
どうしようもなく、いびつな愛ではあるが。
アタマではわかっていても、どうすることもできない。
結局、頽廃して破滅する末路。
ここまで人間性を失って、
けもののように死んでいけるのなら、
それも本望なのかもしれない。

決して幸せになれる映画じゃない。
辛くなるとわかっていても、無性に観たくなることがある。
現実なら耐えられないことだけど、妄想なら浸っていられる。
観た後は必ず放心してしまって何もできなくなるけど。
(2009.6.30)

イノセント

1976年 
イタリア・フランス
監督:ルキノ・ヴィスコンティ 
脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ/ルキノ・ヴィスコンティ
主演:ジャンカルロ・ジャンニーニ/ラウラ・アントネッリ/ジェニファー・オニール、マルク・ポレル

31Jul.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★★★

とにかく空気が重い。
豪奢な屋敷や格調高い調度品のせいなのか、
美しいけど窮屈なドレスのせいなのか、、、
様々な思惑を宿した気がねっとり絡み合っている。

その空気の濃度を高くしているのが、
主人公トゥリオの身勝手な言動である。
だいたい自分の妻(ジュリアーナ)に
「おまえは妹のような存在で、愛人になったことはない。
テレーザは愛人だ。許してくれ」なんて台詞、
イタリア貴族なら許されるのか?
それでも貞淑な妻はそんなトゥリオを受け入れるのだが、
気持ちは抑えようにも抑えきれず、悶え苦しむ。
そんなジュリアーナがあまりにエロティックだった。
重々しい空気の中だからこそ、なおも艶かしかった。

ジュリアーナは作家のフィリップ・アルポリオと
愛しあうようになり、フィリップの子を身籠る。
トゥリオは堕ろせというが、ジュリアーナは頑に産むという。
柔順だったはずの妻が自分の思うようにいかなくなり、
トゥリオは焦りをみせる。そして、出産。
トゥリオは現実に耐えられなくなり、、、
トゥリオの傲慢さは
自分中心に世の中が動くという妄想の中にあったが、
生身のトゥリオは実はその傲慢ゆえの運命に翻弄されてしまう。
自信に満ち溢れて輝いていた瞳が、
焦燥感や苛立や不安が忍び込み、翳りを帯びていた。
嫉妬という感情から逃れられない瞳。
それがまた何ともいえなくエロティックだと思った。

昼ドラのような物語設定ではあるものの、
ヴィスコンティならではの人間を見せてくれている。
人は追いつめられた時どうなるか、、、
この空気感でなければ
表現できない本質があるように思った。

唯一リラの別荘で二人が愛しあった時だけは、
その重圧から解放され、爽やかな風が吹いていた。
この夫婦にとってこれだけは嘘のないひとときだった、
と、信じたい。
 (2008.8.24)

2010-06-19

ルードウィヒ

1972年 
イタリア・西ドイツ・フランス
監督・脚本:ルキノ・ヴィスコンティ 
脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ主演:ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー

01Aug.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★★★

暗い映画だった。
夜とか、闇とか、影とかが印象的だった。
昼でも建物の中だと厚いカーテンのせいか、やっぱり暗い。
太陽が燦々と降り注いでいるシーンがほとんどない気がした。
ルードウィヒは太陽というより青白い月のイメージ。
儚く脆いガラス細工のように繊細な月の王さま。

頼りになる、支えになる、
信用できる側近がいないってのが、
ルードウィヒの最大の不幸。
政治だの経済だの戦争だのという
生臭い現実など見ようとするわけがなく、
それに立ち向かえるだけの図太さも持ち合わせていない。
美しさを追求する芸術に傾倒していくのは
自然といえば自然の成りゆき。
音楽や花や月の美しさは理解できても、
国を統治する責任の重さを実感することはない。
つまり戴冠して以降、
ルードウィヒは現実を生きてはいない。
妄想の中に放り込まれたまま、
確かなものを何一つ手にしていない。
寄りかかれるものを求めれば求めるほど、
孤立していく、、、
当然、狂うべくして狂うのである。

唯一現実があったとするならば、
エリーザベトの存在ぐらいだろう。
それすらルードウィヒにすれば
とらえることが適わない存在なのだから、
支えにもならない夢物語になってしまう。

やっぱり、ヴィスコンティ。重い、重い。
とことん隙がない。独特の緊張感がある。
とにかくピーンと張りつめている。
でもルードウィヒの美しさに惹き込まれるので、
4時間は長くなかった。
(2008.8.25)

2010-06-16

おやすみ、クマちゃん

1975-78年 
ポーランド
原作:チェスワフ・ヤンチェルスキ
原画・美術:ズビグニエフ・ルィフリツキ/ルツィアン・デンビンスキ/マリアン・キュウバシュチャク/ダリウシュ・ザヴィルスキ/ヤドヴィガ・クドゥジツカ/エウゲニウシュ・イグナチェク

12Feb.'08 シネマアンジェリカにて
★★★☆☆

こういう素朴な人形劇のアニメに目がなくて、
みつけてしまったので、観ないわけにはいかなくなり、
雨の中、行くことになってしまった(笑)

ぬいぐるみのクマちゃん、よくできてる。
クマちゃんの服とか部屋とかもセンスよくてかわいいし、
森とか山とか川とかお家とか、
セットもすごく凝っている。

ホントは字幕で観たかったけど、
こども向けだからしょうがないか。
(って、観客がワタシを含めて二人だけで
ほとんど貸し切りだったんだけど、、、)
あと、ちょっとクマちゃん、いいコすぎだよなぁ。
文部科学省推薦って感じだった。
だからかな、ダメっぷり満載のぶたくんに共感がもてた。

「雪だるまさんと春の訪れ」が好き。
季節の移り変わりの話がちゃんとできていて、
いいなぁと思った。
(2008.2.12)

2010-06-12

地獄の黙示録 特別完全版

1979年 
アメリカ
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド/マーチン・シーン/ロバート・デュバル

08Aug.'08 早稲田松竹にて
★★★★☆

ずっと観たい観なくちゃと思いながら、
いつも後回しにしてきた映画。
ある種の覚悟がなければ
観てはいけないような気がしていた。
(おおげさかな)
そして観てから一ヶ月以上になるというのに、
レビューがずっと書けなかった。

オープニングのマーティン・シーンとドアーズの音楽が、
すごくサイケで'70年代で妙な昂揚感で一気に惹き込まれた。
で、やはり映画的に圧巻なのは
『ワルキューレの騎行』のシーンだろう。
一番の見せ場であり盛り上がりになるのだろう。
キルゴア中佐がまずは狂気であり、
この最中のサーフィン、
ナパーム弾、火の海、ヘリコプター、、、
ある意味、アメリカ軍の茶番劇をみせつけられながら、
ベトナムの森が炎上している。
どこかで沸き上がってくる怒りを感じながらも、
ここですでに、
ああ、戦争なんだ、
わかったよ、もう十分だよ、
そう思い知らされる。

ワタシの勝手な憶測だけど、
コッポラはここまではある程度こうしたいというものが
できていたんじゃないかと思う。
『ワルキューレの騎行』のシーンは、
もしかしたら思っていた以上のできだったのかもしれない。
でもここから先、川を遡って行き、
カーツ大佐に出会ってからが、地獄だった。
映画の物語もそうだし、コッポラや制作クルーにとっても。
どうにも抜け出せない迷路にはまり込んでしまったようだ。
終わらせようにも終わらせることもできなくて、
何かに取り憑かれたかのように
続けるしかなかったんじゃないだろうか。

観ている方も急にトーンダウンして訳がわからなくなるし、
眠くなるし、理解しようにもついていけなくなる。
でも後半部分がなければ、『地獄の黙示録』は成立しない。
それもすごく納得できる。

カーツ大佐は、
実のところウィラード大尉(=アメリカ軍)を
利用したってこと?
ウィラードはこの後どうなるんだろう。。。
やっぱりもう一度、観なくちゃかな。

ベトナムの地は本来は美しい楽園だった。
この地を地獄にしたのは、人間でしかない。
そのことを肝に銘じなければ、
この映画の存在価値はないように思う。
 (2008.9.21)

ゾンビ ディレクターズカット完全版

1978年 
アメリカ
監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ 
脚本・音楽:ゴブリン/ダリオ・アルジェント
出演:ケン・フォーリー/デヴィッド・エンゲ/スコット・H・ラインガー/ゲイラン・ロス/トム・サヴィーニ 

11Jul.'08 早稲田松竹にて
★★★★★

子どもの頃から染み付いているゾンビのイメージって、
これだったのね。まさしくゾンビの原型だわ。

だんだん観ているうちに、人間ってバカだよなぁって、
認識をあらたにしちゃった。
ある意味、ゾンビの方がまともにみえた。
ゾンビは慌てないし、わめかないし、、、
ゾンビはゾンビのあるべき姿を全うしてるっていうかね。
最後には愛おしさすら感じたもの。

この映画のメッセージにもなってるんだけど、
人間って物が溢れてると物に溺れちゃうんだなぁ。
この状況でお金なんて何の役に立つんだろうって感じだし。
で、結局人間同士で殺しあってるし。
ゾンビより人間の方が怖かったよ。

映画はいささかチープな感じがするけど、
逆にワタシにはそれがよかった。
最近のホラーは心臓に悪いばかりだからなぁ。
これぐらいだと感情移入できる。
何はともあれ、
この映画は永久保存版には違いない。
 (2008.7.26)

天国から来たチャンピオン

1978年 
アメリカ
監督:バック・ヘンリー/ウォーレン・ビーティ
出演:ウォーレン・ビーティ/ジュリー・クリスティ/ジェームス・メイソン/ジャック・ウォーデン/チャールズ・グローディン/ダイアン・キャノン

14Aug.'09 DVD
★★★☆☆

たまにはこんな映画もいいかも。
すーっと、そのまま映画の中に入り込める。
何にも考えず、肩の力を抜きっぱなしでいい。

ウォーレン・ビーティはこれでもかっていうぐらい、
元気はつらつ、パワフルで明るく、
悩んだことなんてないだろって感じで、突き抜けてる。
天国への中継点での傍若無人ぶりには、笑った。

映像は'70年代の匂いぷんぷんで、
ストーリーはありがちだし、つっこみどころ満載。
取り立てていいと思うところは、特にない。
メッセージとかもありそうで、たいしてない。
でも一度観だしたら、最後まで観ちゃう。
イヤな気持ちになるようなことはない。
ウォーレン・ビーティの人懐っこい笑顔に、
ついつい見入っちゃう。 そんな映画。
(2009.8.15)

タクシードライバー

1976年 
アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ/シビル・シェパード/ピーター・ボイル/ジョディ・フォスター/アルバート・ブルックス/ハーヴェイ・カイテル/ダイアン・アボット/マーティン・スコセッシ

18Jul.'09 DVD
★★★★★

ずいぶん昔に観たきりになってた。
無性に懐かしくなったので観たのだが、
覚えてないもんだなぁ。こんな話だったっけ?
ジョディ・フォスターのくだりはなんとなく記憶にあるけど。

さすがに「俺に用か」といって、
鏡に拳銃をつきつけているところは覚えてた。
このポーズのこの構図、
いろんな映画が真似? オマージュ?してるよなぁ。
ナルシストもここまで徹底してると、
バカバカしいのを超えて、 めちゃくちゃかっこいい。
筋肉質なカラダがたまんないね。

トラヴィスの正義って、 歪んでるし、滑稽だし、
バカとしかいいようがない。
わかっちゃいるけど、
衝動を抑えられないのはどうしようない。
思い込んだらいくところまでいくしかない。
で、いっちゃうんだよね。
映画はこの正義を正当化していないところが、いい。
どこまでもバカな行為という視線で見ている。

最後、なんで死ななかったんだろう。
あえて生き返らせて、
ヒーロー扱いしたのはなぜだろう。
蛇足のように見えるけど、
これでいいのかもとも思える。
タクシードライバーは眠らない街、
狂気の街に戻ってきて、
ずっと闇と対峙しなくちゃならなくて、
そこから抜け出すことはできない。
バカな正義を振りかざしたところで、
現実は何も変わっていない。
ぼやけたネオンの映像が悲哀を帯びているのは、
そのせいなのかも。

スコセッシがこういう映画を作ることはもうないのかな。
泥臭い男の世界をもっと観たいのに。
期待してるんだけどなぁ。
(2009.7.19)

2010-06-07

スリーパー

1973年 
アメリカ
監督:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン/ダイアン・キートン/ジョン・ベック/メアリー・グレゴリー/ドン・キーファー/ドン・マクリアム/バートレット・ロビンソン

24Jun.'09 DVD
★★★★★

ウディ・アレンとダイアン・キートンのでこぼこコンビが、
なんとも微笑ましい。

1974年に冷凍され眠っていた男が、
200年後の2174年に目を覚ます。
覚醒させた医師が反体制運動をしていたせいで、
起きたとたんに反体制思想犯で追われる身となる。

200年後の未来を描きながら、
'70年代の世相をユーモアいっぱいに反映させている。
しかも'74年から35年もたった今、これを観ても、
165年後がこんなことになってるんじゃないかと、
思わせるところがまだまだあるってことが新鮮だった。

それにしても、笑った。笑わせてもらった。
ロボットや機械のチープで脆くて、
皮肉たっぷりだけど、 そのバカバカしさに、
思いっきり楽しませてもらった。
そしてそのロボット以上に、200年後の人間たちが変だもん。
チンケなウディがだんだんまともに見えてきちゃったよ。
ずるいなぁって思ったけど、ま、いっか。
自分の映画だし。
 (2009.6.29)