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2011-01-10

パリ、テキサス

 1984年
フランス/西ドイツ
監督:ヴィム・ヴェンダース 脚本:サム・シェパード 
撮影:ロビー・ミュラー 音楽:ライ・クーダー
出演:ハリー・ディーン・スタントン/ナスターシャ・キンスキー/ディーン・ストックウェル/オロール・クレマン/ハンター・カーソン/ベルンハルト・ヴィッキ

26Nov.'10 早稲田松竹
★★★★☆

はじめてこの映画を観た時の感動は、今でも覚えている。
こんなにかっこよくて、こんなに切ない、
理屈じゃないんだよって、この空気感なら、
なんでも受け入れられた。

なのに20年近くたった、今改めて観たら、
うーん、なんだか、すごくアメリカっぽくて、、、
そのアメリカ臭さがハナについてしまった。
そりゃ、テキサスが舞台なんだし、
アメリカの俳優が出てるんだから、当然で、
そんなこと思う方がどうかしてる。それはわかってる。

近年、ヴェンダースの映画をいくつか観たせいなのか、
より、ヴェンダースにはまっているのかも。
『パリ・テキサス』は他のヴェンダース映画より、
わかりやすいし、観やすい。
だから余計につまんないことが気になっちゃったのかも。。。
とはいえ、ギターの音色にしろ、
テキサスのランドスケープにしろ、
ヴェンダース色は炸裂してる。
この映画に不満なんて、ホントないんだけど。
なんだろうな。
まあ、次に観たら、また違ってるかも。
気まぐれなので、ね。

主人公はサム・シェパードじゃなくて、ホントよかったと思う。
ナスターシャ・キンスキーは雰囲気あるなぁ。
(2010.12.28)

ベルリン・天使の詩

1987年
西ドイツ/フランス
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ブルーノ・ガンツ/ソルヴェイグ・ドマルタン/オットー・ザンダー/クルト・ボウワ/ピーター・フォーク/ラジョス・コヴァーチ

26Nov.'10 早稲田松竹
★★★★★

なつかしいなぁ。
この映画でワタシの映画観が一変した。
それまではハリウッドものしか観てなかった。
映画にこんな世界があるんだって、知った。
それ以来、映画の虜になった。
そういう意味で、ワタシにとってかけがえのない映画。

20年以上もたって、改めて観ても、
全然色褪せてない。
やっぱり、いい。
導入の思わせぶりな詩といい、
モノクロとカラーの映像といい、
物語の構成といい、
で、図書館を天使のたまり場にしてたり、、、
刑事コロンボ?役の俳優役がキャストされてたり、、、
ヴェンダースならではの、粋なひねりが満載。
ちょっと間違えれば、
ありがちなあざとさになりかねないような演出が
すごく自然に繰り広げられている。

天使も人間の世界がいいって思うんだなぁ。
ま、天使にもよるんだろうけど。
でも雲の上から眺めてるだけで何もできないのよりは、
しんどくても地を這っている方がおもしろいよ。

ダミエルの選択にすごく共感した。
親近感を覚えた。

そして、今はなきベルリンの壁が。
統一前のドイツ、その激動を予感させながら、
それとはよそに、天使の眼差しが柔らかく優しい。
大きなものに包まれている、
安心感があるのはその眼差しのせいかな。

やっぱり、好きだ。
この映画に出会って、よかった。
(2010.12.28)

2010-11-29

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

2009年
フランス/香港
監督:ジョニー・トー
出演:ジョニー・アリディ/シルビィー・テステュー/アンソニー・ウォン/ラム・カートン/ラム・シュー/サイモン・ヤム/チョン・シウファイ/フェリックス.ウォン/バーグ・ウー/マギー・シュウ/ヴィンセント・ズェ/フォン・ツイフェン

20Oct.'10 早稲田松竹
★★★★☆

なんか、とにかく不条理だよなぁ。

にしても、行きがかりで請け負った仕事、
確かに仕事には違いないけど、
訳のわからないフランス人の言ってることを真に受けて、
ここまでやるのか、、、
だって、仮にも殺し屋でしょ。
フランス本国にレストランがあるのかもしれないけど、
この3人がフランスに行くことがあるとも思えないし。
自分たちのボスや組織よりなぜにコステロなのか、、、
おひとよしにもほどがある。
この殺し屋の3人、間違いなく、
オレオレ詐欺とかに簡単に騙されるなって思った(笑)
にしても、まぁ、その仁義に、そそられはする。
なんか郷愁を感じるし、
コステロも含めてみんな憎めない人物像なんだけど。

ジョニー・アリディは渋い上に、
その存在にユーモアというか、おかしさを含んでいて、
なんだか目が離せなかった。

男の世界は単純でかつ複雑で、
寅さんじゃないけど、
男はつらいなって実感した映画だった。
(2010.11.4)

2010-09-08

霧の中の風景

1988年
ギリシャ・フランス
監督:テオ・アンゲロプロス
出演:ミカリス・ゼーケ/タニア・パライオログウ/イリアス・ロゴテティス・ミハリス・アナトゥス/コスタス・ツァペコス/ディミトリス・カンベリディス/ヴァシリス・コロヴォス/ソクラテス・アラフォウツォス/イェラシモス・スキアダレシス

04Sep.'10 新文芸座
★★★★★

姉弟にとって、父親って何だったんだろう。

ありがちな言葉になってしまうけど、
この旅は、旅というより、人生そのもののように見える。
けど、幼い姉弟には過酷すぎる。。。
そんな過酷な人生を、その齢で知る必要などないはず。。。
列車に乗るという境界をひとつ越してしまったばかりに、
始まってしまった人生の旅路。
引き返すことすらできなくなってしまった。
姉のヴーラは痩せっぽちのカラダで、
覚悟を決めて、全てを受け止めようとしていて、
その健気さが、ホントに切ない。
そして、その酸いも甘いもを知ってしまうことになる。

そこまで姉弟にさせる、
その父親という存在は一体何だったんだろう。

結局、ドイツ国境は越えて、
霧の中が見えるようになって、
ほんのちょっとだけほっとするけど、
決して旅が終わったわけではない。。。
姉弟はいつまでも終わらないこの旅を、
ずっと続けていくのだろう。

なんとも不思議な場面やモチーフがよく出てきて、
例えば、雪が降ってきたといって、
警察の職員が全員上を向いて静止していて、
まるで時間が止まったみたいになったり。
手の塑像がヘリコプターで吊られて、空に浮かんでいたり。
何の意味があるのかは分からないけど、
なんとも意味深、意味ありげ。。。

ヴーラの端正な顔立ちで、まっすぐな目に、
ドギマギする瞬間が何度もあった。

なんとか温かいベッドで二人をゆっくり休ませてあげたい。
そういう場所を早くみつけてほしい。

2010-09-02

ロング・エンゲージメント

2004年
フランス
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトウ/ギャスパー・ウリエル/ドミニク・ピノン/クローヴィス・コルニヤック/ジェローム・キルシャー/シャンタル・マーヴィルト/アルベール・デュポンテル/ドニ・ラヴァン/ジャン・ピエール・ベッケル/ドミニク・ベテンフェルド/ジャン=ピエール・ダルッサン/ジョディ・フォスター/ブーリ・ランネール/ティエリー・ギボール/フィリップ・デュクズヌ/ソレーヌ・ル・ペション・ヴァルジル・ルクレール/ジュリー・ドパルデュー・マウド・レイヤー/チェッキー・カリョ/フランソワ・ルヴァンタル/ミシェル・ヴュイエルモーズ

01Sep.'10 早稲田松竹
★★★★☆

初っ端から、塹壕を歩いている。暗い。寒い。
第一次世界大戦の最中、死刑を宣告されている5人の兵士。
その中にマチルドの恋人、マネクもいた。
容赦なく、えげつなく、扱われている。。。
つい身を硬くしてしまう。

戦場ではブルーの映像で、
マチルド関連はアンバーの映像。
なんか飽きるよなぁって思いながらも、
ところどころで、そこはジュネ、ジュネ色が健在で、
色味がなくても、深いなぁと思うところが、ある。
とかく戦場シーンは、暗くて、
よくありがちな陰影が濃い映像ではあるんだけど、
でも、ちゃんとジュネ色になってる。
どうしてそう見えるんだろう。ホントにすごいよ。

絶望的状況でありながら、
それでもマネクが生きていると信じて貫くマチルド。
おまじないって、いい方法だな。
理由のない希望が持てる。勇気が沸く。
で、問題は抱えながらも、
大手を振って、ハッピーエンドではないけど、
でも、絶望からは救われてる。。。
生きてることもまんざらじゃないと思わせてくれる。
この絶妙な展開が、厭な後味を残さないのだろう。

登場人物が多くて、
相関図が混がらがって、どうにも怪しくなっちゃった。
この人は誰の恋人だっけ? なんて、ちょっと大変だった。
ジョディ・フォスターが出てると知って、後でびっくり。
なんか似てる人がいるなぁとは思ってたけど、
こっちはストーリーを追うのが必死だから、
そこに気づく余裕がなかったのよ。

もう一度、落ち着いて観たい映画だなと、切に思う。

アメリ

2001年
フランス
監督・脚本:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトウ/マチュー・カソヴィッツ/リュフュ/ヨランド・モロー/アルチュス・ド・バンゲルン・ウルバン・カンセリエ/ドミニク・ピノン・モーリス・ペニシュー/クロード・ペロン/ミシェル・ロバン/イザベル・ナンティ/クレール・モーリエ/クロチルド・モレ/セルジュ・メリン/ジャメル・ドゥブーズ/ロレーラ・クラヴォッタ・アルメレ/フローラ・ギエ/アモーリー・バブー/ジャン・ダリー/ティッキー・オルガド/アンドレ・デュソリエ

01Sep.'10 早稲田松竹
★★★★★

なつかしいなぁ。
久々になっちゃったなぁ。
いろんなこと思い出しながら、観た。
それでも、アメリは、やっぱりアメリだなぁ。

ジュネの世界観、映像感覚がたまらなく好き。
アメリは真骨頂って感じがする。
こういう映画はとかく甘ったるくなりがちだけど、
ただ可愛いってだけじゃなくて、
結構、真髄をついてるから、つくづく納得できる。
いろんなエピソードが、それぞれ面白い。
みんながそれなりに幸せになってて、、、
少なくとも、そんなに不幸にはなってなくて、、、

アメリは人のことならよくわかって、
おせっかいさながらの、いろんなちょっかいが、
なかなか粋だったりする。
なのに、自分のこととなると、どうしようもなく不器用で、
なんとも、じれったくて、、、
ホントにそういうところ、わかる。
きっと誰もが実感としてあるところだと思う。
でもワタシも他人事だから、なにせ、
観ながらにして力が入るんだけど(笑)
ほら、そこで勇気があればって、ね。

やっぱり、赤と緑が印象的。
なんだろうな、色が深いよなぁ。
でも光は柔らかい。独特だよなぁ。
つくづくジュネ色だなぁと感心して観ていた。

2010-08-04

ぼくの伯父さんの休暇

1952年
フランス
監督:ジャック・タチ
出演:ジャック・タチ/ナタリー・パスコー/ルイ・ペロー/ヴァレンティーヌ・キャマックス/リュシアン・フレジ

31Jul.'10 新文芸座
★★★★★

やっぱり、ユロ伯父さんは無口で無表情。
それでいて、まわりと噛み合ない行動をするので、
ドタバタばかり巻き起こす。
いつもひとりでいて誰と話すでもなく、
その存在をゼロにしようとしてるのに、
存在感はマックス100になってる。

まわりはユロ伯父さんにびっくりさせられたり、
鬱陶しがったりはするものの、
でもひとつひとつはたいしたことじゃないので、
そんなに怒る人もなく、、、
いつの間にかユロ伯父さんを認めてたり、
好きになってたりする。

タチの映画って、コメディの位置づけだったんだと、
今頃、気づいた。というか、知った。
確かにパントマイムの手法でユーモアを表現してる。
チャプリンやキートンを思い出すのもわかる。
で、笑いとしては、古くさいのも当然だと思う。
だって50年も前の映画だし。

ユロ伯父さんは無口で無表情でも、
人をけなしたり、あざけたりしない。
そういうことで笑わせようとしていない。
だから、ほっとできるんだと思う。

ワタシはくすって笑えれば、それでよくて、
ユロ伯父さんのまわりの人も、
ワタシが観ている映画館の観客も、
そこにいるみんなが、
少しでもあったかい気持ちになれれば、
観た甲斐があったと思える、
それがタチの映画の良さだと思う。

がははと大笑いできる映画でも、
めちゃくちゃドキドキする映画でも
涙がぽろぽろこぼれる映画でもないけど、
でも、どこか何かに響くものがある。
だから、何度も観たくなるんだと思う。

のんき大将

1947年
フランス
監督:ジャック・タチ
出演:ジャック・タチ/ギイ・ドコンブル/ポール・フランクール/サンタ・レーリ/メーン・ヴァレー

31Jul.'10 新文芸座
★★★★☆

カラー版で観た。
タチはカラーにすることをこだわっていたが、
当時はプリント技術がなく断念して、モノクロで上映。
タチ没後、タチの意志を受継いで、
カラーで焼き直して発表(1995年)した。

祭りの日、
郵便配達人のフランソワは自転車で配達をしている。
のっぽでのんきなフランソワ。
村の人たちにバカにされながら、
何かするたびにドタバタしている。

そうこうしていて、アメリカの郵便配達の映画を観る。
村の人にアメリカ式でやってみろよなんていわれて、
いきなりアメリカに対抗意識をもちはじめる。
俄然やる気をみせるも、空回りしてるだけ(笑)
結局、「アメリカはアメリカ」だって。
「いい手紙なら待てばいい」
こういう感じが、まぁ、好きなんだけどね。

時代なんだろうけど、この頃のフランス映画は、
アメリカを意識してるものが結構あるなぁって思う。

短編映画の『郵便配達の学校』を長編にしたのが、
この「のんき大将』
短編部分はほとんどそのまま嵌め込まれているけど、
やっぱりここが山場といえば、山場になるのかな。
自転車がひとりで走る、走る。
絵本だったらよくある発想だけど、
映像でこれができたんだなぁ。
今ならCGとか使えば難しいことでないのかもだけど。
そうじゃなくて、なんか叙情的というか。。。
自転車とか、物に命を吹き込んで、どうなるどうなると、
思わせて、でもたいしたことにもならず、って、
のんびり、ほのぼの感が何ともいえない。

短編の方が完結してて、完成度は高いとは思う。
でもワタシは『のんき大将』の、このだらだら感が実は好き。
郵便配達人の日常の何日間を切りとっただけってのが、いい。

2010-06-25

男性・女性

1966年
フランス/スウェーデン
監督:ジャン・リュック・ゴダール
出演:ジャン・ピエール・レオ/シャンタル・ゴヤ/マルレーヌ・ジョベール/ブリジット・バルドー/アントワーヌ・ブルセイユ

16Apr.'10 早稲田松竹
★★★★★

相変わらずゴダール、って感じ。
映像とピストルの音、
謎めいた標語のような意味ありげな言葉は、
やっぱりゴダール。

ジャン=ピエール・レオも、
無表情で飄々としてて、でも憎めなくて、
相変わらずな感じ。

シャンタル・ゴヤがかわいらしくて、
スッピンで普通の素朴な女の子のイメージのせいか、
いつものゴダール作品よりすんなり入り込めた。

フランスの若者はなんかお洒落だよなぁ。
フレンチポップも心地いい。
ところどころに政治的メッセージがちりばめられていて、
ぴりっと締めている。スパイスになってる。
若者を描いているけど、
ただかわいいだけ、楽しいだけの映画じゃない。
それも、やっぱりゴダール。

60年代の映画なんだよね〜
全然古くないよなぁ。
(2010.4.21)

2010-06-23

アルファヴィル

1965年 
フランス/イタリア
監督:ジャン・リュック・ゴダール
出演:エディ・コンスタンティーヌ/アンナ・カリーナ/エイキム・タミロフ/ハワード・ヴェルノン/クリスタ・ラング

29Aug.'09 DVD
★★★★☆

ゴダールの映画の中では、かなりわかりやすい方だと思う。
表向きはSF映画で、ハードボイルドアクション系で、
しかもスパイもので、ミステリーの要素もあるかな。
これでもかっていうぐらい、エンターテイメント化してるけど、
まともにSF映画をやる気はないんだろうな。
セットなしで、ロケだけでやっちゃうって。
それでもスタイリッシュな未来都市は成立しているから、
すごいと思う。

思想統制?
言語統制?
感情統制?

共産主義批判からだとは思うけど、
それにしてもすごい未来都市ができちゃうもんだ。
でもあながちないとは言い切れないところが、
やっぱり怖かったり。

で、結局いいたいのは、最後の台詞になる。
これに集約されちゃうんだよね。

だから、ゴダールを観たくなっちゃうのよ。
面倒くさい作品が多くてもね。
これは、あまりにストレートで肩すかしだったけど(笑)
(2009.8.29)

ぼくを葬る

2005年 
フランス
監督:フランソワ・オゾン
出演:メルヴィル・プボー/ジャンヌ・モロー/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ/ダニエル・デュバル/マリー・リヴィエール/クリスチャン・センゲワルド/ルイーズ=アン・ヒッポー

25Aug.'09 DVD
★★★★☆

余命3ヶ月の宣告されたロマン。
ひとつ、またひとつと、残すものと手放すものを、
潔く割り切りながら、死に向かって片付けていく。
いろんな感情に揺れながらも、
淡々と、でも確実にこなしていく。

ジャンヌ・モローのおばあちゃん。
皺の一本一本にいろんな人生がみえる。
自分がしてしまった失敗をロマンに話す。
ロマンを信用してるから、話したんだと思う。
そんなおばあちゃんだから、
ロマンは病気のことを話せたのだろう。
似た者同士というのは、つながってるもの同士。
信じて愛し合える相手なのだと思う。

オゾンはロマンに自分を投影してるらしいけど、
この映画、きれいすぎるよ。
もうちょっと人間臭くてもよかったんじゃないかな。
ホント、ナルシストだよね。
でも変に感傷を押し付けられたりはしてないので、
そこはよかったと思う。 
(2009.8.28)

ふたりの5つの分かれ路

2004年 
フランス
監督:フランソワ・オゾン
出演:ウ゛ァレリア・ブルーニ・テデスキ/ステファン・フレイス/ジェラルディン・ペラス/フランソワーズ・ファビアン/マイケル・ロンズデイル/アントワーヌ・シャピー

23Aug.'09 DVD
★★★★★

 離婚調停にサインをするマリオンとジル。
どうすれば、良かったのか。 何がいけなかったのか。
必死で記憶を辿っても、どんなに思い巡らしても、
答えはみつからない。 そもそも正解なんてないから。

「勝ち負けじゃない。終わっただけ」
そう。 勝ち負けじゃない。
正しいか間違ってるかでもない。

マリオンはずっと満たされていなかった。
男と女のちぐはぐさ、行き違い、すれ違いは、
あまりに微妙でうまく伝えられない。
みえない溝があることに気づきながらも、
ジルには、その溝が何なのかも埋める術もわからない。

「終わっ ただけ」というマリオンに、
「やり直せないか」というジル。

この二言が、すごく男と女を表してる。
怖いほど、リアルだ。
(2009.8.26)

ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン

2007年 
フランス
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ジュリエット・ビノシュ/イポリット・ジラルド/シモン・イテアニュ/ソン・ファン

19Feb.'09 早稲田松竹にて
★★★★★

ピアノの音が心地よかった。
その音に揺られるように風船が浮かんでいて、
違和感なく風景に溶け込んでいた。
ベビーシッターのソンは静かで穏やか。
対照的にスザンヌは慌ただしくてどこか情緒不安定。
映画自体も柔らかく和やかな空気が漂うせいで、
スザンヌの不調和が強調されて、
こっちまでなんかそわそわしてしまう。
シモンが「ぼくも、男だよ」っていったとき、
泣きそうになった。

ピアノの音を調律するように、
ココロもたまには調整しなくちゃ。
風船がいつも見守ってくれてるしね。

じんわりあったかい映画だと思う。
 (2009.6.8)

赤い風船

1956年 
フランス
監督:アルベール・ラモリス
出演:パスカル・ラモリス/サビーヌ・ラモリス/ジョルジュ・セリエ/ヴラディミール・ポポフ

16Feb.'09 早稲田松竹にて
★★★★★

パリの街の色が抑えられていて、
そこに赤い風船がとても鮮やかに映えていた。
風船が少年に捕まえられるのはいやだけど、
でも後ろについていくのが、微笑ましかった。

『白い馬』と同様、こちらも少年と風船の友情物語。
風船のためにみるみる強くなっていく少年。すごい。
で、ものごとにつきものの儚さというか、
ちょっとおおげさだけど、無常観も、、、
でも終わったときに、そんなに悲愴感はなかった。
 カラフルな風船いっぱいの風景は、
気持ちを晴れやかにするから。

少年のスウェット姿がめちゃくちゃかわいかった。
(2009.6.8)

白い馬

1953年 
フランス
監督:アルベール・ラモリス
出演:アラン・エムリー/ローラン・ロッシュ/フランソワ・プリエ/パスカル・ラモリス

16Feb.'09 早稲田松竹にて
★★★★★

この感動を伝えたくても、
何か言葉にすると陳腐にしかならない。
ホントにホントに美しいとしかいえない。
少年も白い馬もその友情も、物語もモノクロの映像も。
あまりに美しすぎて、放心状態で観ていた。

少年と馬との信頼関係やその絆を踏みにじることは、
誰にもできない。
シンプルなだけに、胸の奥にずんと突き刺さるものは大きい。
 (2009.6.7)

パリ、恋人たちの2日間

2007年 
フランス・ドイツ
監督・脚本・編集・音楽・出演:ジュリー・デルピー
出演:アダム・ゴールドウィン/ダニエル・ブリュール/マリー・ピレ/アルベール・デルピー

28May.'08 恵比寿ガーデンシネマにて
★★★★★

とても2日間の出来事とは思えないぐらい、
慌ただしくて大忙しで、ひっきりなしにしゃべってるし、
目まぐるしいけど、でもでも、とにかくおかしくて、
笑っちゃう。

アメリカ人とフランス人のカップル。
それぞれのアイデンティティをもちながらも、
それでもジャックはジャックだからこうであり、
マリオンもマリオンだからこうなっちゃうって、
そんな感じが最後にはした。
アメリカ人がパリにきてどうなるかとか、 何を思うかとか、
そういう広がりはあったので、 その視点でもおもしろかった。

ジュリー・デルピー、インタビューを読んでたら、
とてもパワフルで頼もしい。
でも映画の中では、すごくかわいらしかったな。

ま、男と女のあいだに起こることなんて、
イラク戦争や鳥インフルエンザに比べたら、
たいしたことじゃない。
 うん、ま、そりゃそうだな。
(2008.6.3)

地上5センチの恋心

2007年 
フランス・ベルギー
監督・脚本:エリック=エマニュエル・シュミット
出演:カトリーヌ・フロ/アルベール・デュポンテル/ファブリス・ミュルジア/ジャック・ウェベール/アラン・ドゥテー

11Apr.'08 シネスイッチ銀座にて
★★★★★

どこにでもいそうな普通のオバサンのオデット。
10年前に夫を亡くし、美容師のゲイの息子と、
無職でどこか世の中に冷めている娘の3人暮らし。
親ならそういう状況に追いつめられたり
悩んだりしそうなのだが、至って前向きで楽天的。
ラブロマンス作家のバルサンが大好きで、
本を読んでは夢心地になり、
サイン会に行くといってははしゃいでいる。

突然ミュージカル形式になってオデットが歌って踊り出す。
でも彼女のココロの明るさからすると、違和感がない。
楽しいんだもん、いいじゃないって感じ。

かといって、
恋愛に突っ走ったりするような青臭いところはなく、
ちゃんと地に足の着いた考えももってたりするから、
さすがだ。だてにオバサンをやってない。
で、そういうのが物語になるっていうところが面白かった。

幸せって何だろうなんて妙に考えちゃった。
その答えがみつかるかもしれない気がした。
 (2008.4.17)

潜水服は蝶の夢を見る

2007年 
フランス・アメリカ
監督:ジュリアン・シュナーベル 
原作:ジャン=ドミニク・ボービー 
脚本:ロナルド・ハーウッド
出演:マチュー・アマルリック/マリー=ジョゼ・クローズ/マックス・フォン・シドー

14Apr.'08 ワーナーマイカルシネマズ新百合ケ丘にて
 ★★★★★

重くなりがちなテーマでありながら、
光があふれる透明感のある映像のせいか、
穏やかな気持ちで観ることができた。
ジャン=ドーの目線の映像は慣れるまでは酔いそうになるが、
それも含めてジャン=ドーと同じ視界を体験できるのは
なかなか画期的だと思う。
それにしても、この映像のセンスの良さには脱帽である。
こういうのってやりすぎると、すごくイヤミになるけど、
ちょうどいいバランスで押さえられている。
すばらしい。 音楽の選曲もすごく好き。

「E・S・A・R・・・」
何度も何度も気が遠くなるほど繰り返される作業。
でも何事も不可能じゃない、左目と想像力と記憶があれば。
勇気をもらった。

ちょっと文句があるとすれば、
出てくる人みんなきれいな方々ばかりで、
病院も風景もとにかく美しくて、
そういう意味ではさすがにリアリティがないってことかな。
だからこそ救われていたような気もするけど。
お涙頂戴にならずにすんだのではないかとも思う。
 (2008.4.17)

ペルセポリス

2007年 
フランス
監督・脚本:マルジャン・サトラピ&ヴァンサン・パロノー
声の出演:キアラ・マストロヤンニ/カトリーヌ・ドヌーヴ/ダニエル・ダリュー

03Jul.'08 早稲田松竹にて
★★★★★

イラン。
ワタシにとっては中東の遠い国で、
長い間イラクと戦争をしていて、イスラム教で、
石油がとれる国だということぐらいしか認識がなかった。

マルジャンはワタシとほとんど同世代。
マルジャン自身が感じたり思ったりしたこととか、
好きなスターとかアーティストがいたこととか、
ケチャップつきのポテトが好きだったりとか、
そんな他愛のないことはワタシとそんなに違わない。
だけどそれを許す社会と許さない社会では、
全く違うことになってしまう。
幼い頃から身近な人が思想犯で捕まるような不条理を、
目の当たりにしなくてはならない環境。
子どもながらに感じるものは大きかっただろう。

マルジャンはとてもいいコだとはいえない。
意地悪もするし、ずるいし、間違ったこともする。
ただおかあさんだったりおばあちゃんだったり、
その度にちゃんと諭してくれる人がいた。
周りの人には恵まれてるなと思った。

この映画で、イランの問題が何か解決するわけではない。
波瀾万丈のマルジャン人生記でもなければ、
戦争反対とか何か特別な思想を訴えているわけでもない。
ただ、淡々とマルジャンが生きてきた国の状況と
マルジャンが描かれているだけ。
モノクロで、媚びてなくて、
余計なものが一切ない絵がすごく気に入った。
すんなり映画に入り込めた。

インタビューでマルジャンが実写じゃなくアニメーション、
しかもモノクロにしたのは「第三世界」の物語に
しないためだといっている。
なるほど。マルジャンがますます好きになった。
(2008.7.14)

エンジェル

2007年 
ベルギー・イギリス・フランス
監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:ロモーラ・ガライ/サム・ニール/シャーロット・ランプリング/ルーシー・ラッセル/マイケル・ファスヴェンダー

20Jan.'08 シャンテ・シネにて
★★★★★

虚構の中の虚構の夢物語。
まさしく乙女のおとぎ話といったところだろうか。
ここまで徹底して虚の世界が繰り広げられれば、
その潔さに感服する。

昼ドラ仕立ての構成は夢物語に対するアンティテーゼ。
まともに受け止めたら勘違い女の一生にしか見えない。
でもそれを全部裏返してみれば、
オゾンが何を言いたかったかがわかる気がする。
かなりの冒険をしているし、
それを余儀なくさせるだけのエネルギーを感じさせる。

相変わらずの映像感覚にはやはり脱帽。
オゾンならではの色彩だけでもかなり満足できる。

そして、やはりシャーロット・ランプリング。
彼女の視線の鋭さにには圧倒される。ドキドキする。
この映画では小さな役なのに、
その存在感はしみじみと観ているものに入り込んでくる。

ノラの最後の言葉にオゾンの本音が集約されていると実感した。
虚は虚でしかなく泡のように消えてゆき、
本物は後世に残ってゆく、それが運命なのだと。
(2008.1.23)