ラベル 不器用な偉人たち の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 不器用な偉人たち の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2010-06-23

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

2009年 
アメリカ
監督:ケニー・オルテガ
出演:マイケル・ジャクソン

13Nov.'09 ワーナーマイカルシネマズ新百合ケ丘
★★★☆☆

マイケルはやっぱりすごかった。
とても50歳とは思えない。
若かった頃の動きとまるで同じ。
関節があるのかと思うぐらい柔らかい身のこなし。
それさえ観ていられれば、満足だった。

ほとんどの歌を知ってた。歌えた。
歌詞はうろ覚えだし早いところはついていけないけど、
でも歌えた。
物心ついた頃から、ずっと必ずいた人なんだよなぁ。
ファンだったとかどうとかじゃなくて、
そういうのを超えて、いるのが当たり前だった。
曲のひとつひとつにいろんなことを思い出した。

でも映画としては、いま一つだった。
これがメイキングの記録だとしても、なんか、大味。
材料がないのはわかるけど、
詰め込めばいいってもんじゃない。
巧く作ってあげられる人、いなかったのか。。。

整形やら裁判やら、その他のスキャンダラスな報道が、
彼の本当にしたかったこと、言いたかったことと、
うまく噛み合っていないちぐはぐさを、
いつもどこかで感じていた。
一言何か言えば、全然違う意味で大げさに伝わってしまう、、、
何かのインタビューでマイケル自身も言ってたっけ。
この映画もそんなちぐはぐさを抱えたまま、
終わってしまった。

マイケルは本来すごく繊細な人。
歌も踊りも、すごく繊細。
このライブのスタッフにもすごく繊細な指示をだしている。
なのに、その本意はちゃんと汲取られていないように感じた。

うまく言えないけど、例えば『スリラー』なんかは、
昔MTVで観た映像は手作り感が残りながらも、
当時は感動的だった。
技術的には今の方がすごいんだろう。
お金もかかっているんだろう。
でも、響かない。そこに高揚感も湧いてこない。
単に昔を懐かしんでるだけのことじゃない。
うーん、 いいものが出来上がってヒットしたものと、
売れることが前提で作っているものとの違いかな。
(2009.11.15)

ニコ・イコン

1996年 
ドイツ
監督:スザンネ・オフテリンガー
出演:ニコ/ジャクソン・ブラウン/ジョン・ケイル/クリスチャン・アーロン・ブロング/ニコ・パパタキス/ポール・モリセイ/ビリー・ネイム/ビバ/ティナ・オーモン/アリ・ブロング/エディス・ブロング/ダニー・フィールズ/カルロス・ド・マルドナド/ジョナス・メカス/スターリング・モリソン/ルツ・ウルブリッシュ/アラン・ウィズヘルマ・ウォルフ/ジェームズ・ヤング

26Aug.'09 DVD
★★★★☆

あまりにも奇異な人生。
傷口にさらに塩をぬり込むような痛々しい人生。
あまりにエキセントリックで唖然としてしまった。
ここまで悉く自分のアイデンティティを否定するって、、、

本名がキライ。
ドイツ人がキライ。
美しいのがイヤ。
モデルがイヤ。

否定しかない。
ひとつひとつ壊していく人生。

モデルの頃のニコはホントにかわいい。
人々がうらやむものを何でももっていたのに、
あっさりと捨てる。
そしてなるべくしてヘロイン中毒になり、破滅へと彷徨う。
ヘロインのせいであの美しいニコは面影すらなくなり、
醜くなっていたが、ニコ自身はその醜い自分に満足だった。

ニコは自分の意志とは関係なく、
纏っていなくてはならない、
厭でもどうすることもできない、
本名や出身や美貌という鎧から抜け出したかった。
これを纏っていることが、彼女には地獄だった。
抜け出すためなら、クスリ漬けになっても、
精神病棟に行ったり来たりになっても、
彼女にとってはそれが自由だった。
ニコは純粋すぎたのだと思う。
 
ニコに関わりのある人物がそれぞれニコについて語る。
ニコの人間像とその人生が浮き彫りになっていく。
映像はアーティスティックで見応えがある。
ニコの独特な歌声が映画を通して聞ける。
ニコを知らなくても、ロック好き、ファッション好き、
ウォホール好きだったら、興味深く観られると思う。
 (2009.8.28)

エディット・ピアフ 〜愛の賛歌〜

2007年 
フランス・チェコ・イギリス
監督・脚本:オリヴィエ・ダアン
出演:マリオン・コティヤール/ジェラール・ドパルデュー

28Jun.'08 新文芸座にて
★★★★☆

壮絶な、凄まじいとしかいいようがない。
波瀾万丈だから、大衆を魅了する歌が歌えるのか、
才能に満ち溢れているから、運命に翻弄されてしまうのか。
どうして自らを擦り減らして生き急ぐのだろう。
どうして自ら幸せになる選択肢がないのだろう。
そして、お約束通りにクスリに溺れる、、、
ピアフだけじゃない。
ビリー・ホリディもそうだし、
ジャニス・ジョプリンだってそう。
苦悩と破滅ばかり、、、
ピアフは愛に生きていたはずなのに。
もっと安らかに生きる方法はなかったのか。

『愛の讃歌』は越路吹雪の方がよく耳馴染みになっていて、
ピアフのは実はちゃんと聴いたことがなかった。
独特な鼻にかかった声が、
いつまで聴いていても飽きなかった。
歌はピアフのを吹き替えにしたというのは正解だと思う。

マリオン・コティヤールは凄かった。
猫背のピアフが印象的だった。
痩せていてちっぽけで、
どこから声が出てるんだろうと思わせる演技は、
マリオンが歌ってるようにも見えたぐらいだった。

それにしても晩年のピアフは、
40代に見えないぐらい疲れきっていた。
それぐらい詰め込みすぎた人生だったのだろう。。。
(2008.7.06)

2010-06-20

マリア・カラス 最後の恋

2005年 
イタリア
監督:ジョルジョ・カピターニ
出演:ルイーザ・ラニエリ/ジェラール・ダルモン/アウグスト・ズッキ/シドニー・ローム/セレナ・アウティエリ/ロベルト・アルバレス

25May.'08 早稲田松竹にて
★★★☆☆

いささかメロドラマチックな展開には辟易しながらも、
マリアの恋には嘘はなかったと思う。
その芯にあるのは揺るぎないものだ。

カラスの歌が高貴に満ち溢れていれば、
その反面この恋は俗にまみれていて悲哀さえ感じる。
野心家の男と燃え上がる恋というのは、
どうしてこうもお決まりの物語になるのか、、、
ステロタイプっぶりに嘲笑ってしまう。

さすがラテン、イタリア。
怒るのも笑うのも愛し合うのも激しい。
ここまで感情をあらわにされると、
無防備に人間臭さが強調される。
天才ディーバも女だったと思い知らされる。
成功した者につきものの満たされないゆえの焦燥感は、
マリア・カラスも例外じゃなかった。

予告でも気になっていたのだが、
映像が妙に古くさいのは何なのだろう。
意図的なのか、単にそうなっただけなのか?
ルイーザ・ラニエリが美しかったので、
助けられていたような気がするが。
 (2008.5.27)

2010-06-19

ルードウィヒ

1972年 
イタリア・西ドイツ・フランス
監督・脚本:ルキノ・ヴィスコンティ 
脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ主演:ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー

01Aug.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★★★

暗い映画だった。
夜とか、闇とか、影とかが印象的だった。
昼でも建物の中だと厚いカーテンのせいか、やっぱり暗い。
太陽が燦々と降り注いでいるシーンがほとんどない気がした。
ルードウィヒは太陽というより青白い月のイメージ。
儚く脆いガラス細工のように繊細な月の王さま。

頼りになる、支えになる、
信用できる側近がいないってのが、
ルードウィヒの最大の不幸。
政治だの経済だの戦争だのという
生臭い現実など見ようとするわけがなく、
それに立ち向かえるだけの図太さも持ち合わせていない。
美しさを追求する芸術に傾倒していくのは
自然といえば自然の成りゆき。
音楽や花や月の美しさは理解できても、
国を統治する責任の重さを実感することはない。
つまり戴冠して以降、
ルードウィヒは現実を生きてはいない。
妄想の中に放り込まれたまま、
確かなものを何一つ手にしていない。
寄りかかれるものを求めれば求めるほど、
孤立していく、、、
当然、狂うべくして狂うのである。

唯一現実があったとするならば、
エリーザベトの存在ぐらいだろう。
それすらルードウィヒにすれば
とらえることが適わない存在なのだから、
支えにもならない夢物語になってしまう。

やっぱり、ヴィスコンティ。重い、重い。
とことん隙がない。独特の緊張感がある。
とにかくピーンと張りつめている。
でもルードウィヒの美しさに惹き込まれるので、
4時間は長くなかった。
(2008.8.25)

山猫

1963年 
イタリア・フランス
監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
出演:バート・ランカスター/アラン・ドロン/クラウディア・カルディナーレ/リーナ・モレッリ/パオロ・ストッパ/ロモーロ・ヴァッリ

23Jul.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★★★

瀟洒な館、贅沢な調度品、きらびやかなドレス、
優雅な舞踏会、、、
ゆったりとした時間の流れの中の格調の高い映像、
美術は溜息もの。
空気がねっとり重くて、息が詰まるほどだった。

物語はイタリア統一を歴史的背景に、
シチリア貴族の斜陽と新興階級の台頭を描く。
時代が移り変わる寂寥感とサリーナ公爵の苦悩。
新旧交代に容赦はなく、
受け入れざるを得ない公爵の律する姿が
やるせなくも麗しい。

最後にアンジェリカと踊るワルツは、
終焉にふさわしく美しく厳かですらあった。
若いアラン・ドロンもかっこいいけど、
なんといってもバート・ランカスターは魅惑的だった。
(2008.8.16)

2010-06-16

敬愛なるベートーヴェン

2006年 
イギリス・ハンガリー
監督:アニエスカ・ホランド
出演:エド・ハリス/ダイアン・クルーガー/マシュー・グード/ラルフ・ライアック/ジョー・アンダーソン/ビル・スチュワート

21Jan.'07 シアターN渋谷にて
★★★☆☆

エド・ハリスはがんばっていたと思う。
このベートーヴェン、悪くはなかったと思う。
人間くささがたっていたせいか、
神に近い存在とかってことを語られても厭味はなかった。
妙に納得した。

アンナ・ホルツはかわいかった。
若さも含めて。 う〜ん、でもそうだな、
おんなのこって感じだった。

第九の場面は確かに圧巻。
カラダに音がびんびん伝わってきた。
この10分ちょっとを堪能できただけでも
この映画の価値はあったかもしれない。

でも、なんだろう。
この時代背景にして建物とかも重厚で立派だし、
衣装もそれなりなのに、
なんか重みというか深みというか、
が感じられなかった。

とにかく気になってしょうがなかったのは、
むやみやたらに望遠レンズを多用している映像。
効果を狙ってるのだとしたら、うるさすぎ。やりすぎ。
もっと、しっとり見せて欲しかった。
光のかんじはすごく好みだったのだけど。
それが残念だった。
(2007.1.22)

牡牛座 レーニンの肖像

2001年 
ロシア・日本
監督・撮影:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:レオニード・モズゴヴォイ/マリーヤ・クズネツォーヴァ/ナターリヤ・ニクレンコ/レフ・エリセーエフ/セルゲイ・ラジューク

03Jul.'08 新文芸座にて
★★★★★

シアンの映像がなんとも幻想的で、
瀟洒な館と万緑の森が瑞々しく美しい。
その反面レーニンの人間としての姿が
残酷なほど生々しく描かれていた。
そしてそのレーニンを取巻く空気がどうにも重たくて、
弛むことのない緊張感がそこここに漂っていた。

自由のきかない身で、惚けかかっていながらも、
手紙が自分の手元にこないことや
電話が取次がれないことは知っていて、
周りには監視の目があり、
その意味することもわかっていて、、、
築き上げてきたものが自分の手から離れようとする運命を、
受け入れられない苛立ちが見え隠れする。

妻と二人で森でピクニックをするシーン。
このまま政治も革命も主義も思想もすっかり忘れて、
仰々しい警備などもだれもいなくなって、
こうやって二人でこの美しい森で過ごしたら、
どんなに安らかで幸せな余生になることかって、
ワタシなんかは短絡的に思ってしまう。
権力を握ってしまった人間が
そんなコトを望むわけがないし、
また許されるはずもない。
それはそうなのだが、
このソクーロフのこの映像の中でなら、
そんな道もあってもいいのにと思わせる一瞬、
ほんの一瞬だけど、あったのだ。

レーニンのこととか、ロシア革命のこととか、
もっとよく知っていたら、
もっともっと理解できることがあったんだろうなぁとは思う。
でも歴史を知らなくても、権力者の凋落や、
革命の父にもどうすることもできない病いに支配される、
その悲哀や嘆きは十分感じられた。
 (2008.7.17)

太陽


2005年 
ロシア・イタリア・フランス・スイス
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:イッセー尾形/ロバート・ドーソン/桃井かおり/佐野史郎

28Aug.'06 銀座シネパトスにて
★★★★★

この鬼気迫る空気はなんなんだろう。
イッセー尾形、すごすぎる。
無駄が一切ない映像。
とにかく静かに静かにすすんでいく。

これを日本人が撮ったらどうなるんだろうって、
ずっと思いながら観ていた。
ロシア人のソクーロフでなくてはならなかったのはなぜか。
的確な答えは出しようもないけど、 観ていてその必然、
なるべくしてできた映画だというのは確かだと思った。

イッセー尾形は演じているというより、
天皇ヒロヒトその人になっていたかのようだった。
どっちが本物なの?というぐらい。
この映画に描かれているものが
真実だろうが虚構だろうが
そんなことが問題じゃないような気がした。
人間ヒロヒトは限りなく表現されていたと思う。
(2006.8.29)

レンブラントの夜警

2007年 
カナダ・フランス・ドイツ・ポーランド
監督・脚本:ピーター・グリーナウェイ
出演:マーティン・フリーマン/エヴァ・バーシッスル/ジョディ・メイ/エミリー・ホームズ/ナタリー・プレス/トビー・ジョーンズ

03Jul.'08 新文芸座にて
★★★☆☆

グリーナウェイの夜とか闇って、独特だと思う。
どこか毒が潜んであって、
その闇が幾重にも重なっているような黒という印象がある。
レンブラントといえば、闇と光の画家だし。
グリーナウェイがレンブラントに惹かれて、
なるべくしてできた映画だとすごく納得できた。

『夜警』のくだりは面白かった。
写真のない時代のドキュメンタリーのような絵が
でき上がる一部始終はなかなか興味深かった。

それにしても、長かった。
淡々とした映画はキライじゃないが、
単調でかなり辛かった。
(2008.7.17)

2010-06-15

非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎

2004年 
アメリカ
監督:ジェシカ・ユー
ナレーション:ダコタ・ファニング/ラリー・パイン

17Apr.'08 シネマライズにて
★★★★★

昨年の原美術館の展示を最終日に駆け込みで観たのだが、
その時はあまりよく理解できなかった。
この映画はダーガーの絵の意味、
なぜこれらの絵が生まれたのかが端的に描かれていると思う。
ダーガーのドキュメンタリーであり、
「非現実の王国」のファンタジーであり、
それが合わさって混ざり合って
ダーガーその人の本質が浮き彫りになっていた。

ダーガーにとって現実はあまりに過酷だった。
「非現実の王国」こそがダーガーの現実であり、
ダーガーはこの王国に身を置くことで、
やっと息をすることができたのだろう。
絵を描いて物語を想像していれば心安らかにいられた。。。
ダーガーの絵ののびやかな印象は、だからこそだと思う。
現実が闇であればあるほど、ダーガーの王国は色が溢れ、
華やかでうららかな世界になっていったのだと思う。

ヴィヴィアンガールズが動いていたり、
暗いモノクロのシカゴの映像に淡彩の女の子が見え隠れしたり。
決してダーガーの意を損なうものではないだろう、
ワタシにはなかなか興味深いものだった。
 (2008.4.22)

2010-06-14

アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生

2007年 
アメリカ
監督・製作:バーバラ・リーボヴィッツ
出演:アニー・リーボヴィッツ/オノ・ヨーコ/デミ・ムーア/キルスティン・ダンスト/ジョージ・クルーニー/パティ・スミス/ミック・ジャガー/ミハイル・バリシニコフ

22Feb.'08 シネマGAGAにて
★★★★★

RZを手持ちで撮影をしているリーボヴィッツを
何かで見かけたことがあって、
見間違いか?と思っていたのだけど、
この映画でやっぱりそうだったことがわかった。
とにかく、なにしろ、パワフルだ。

ジョン・レノンとオノ・ヨーコのあまりにも有名な写真。
その後のいきさつは知ってはいた。
そういう一瞬に立ち会わざるを得ない
フォトグラファーとしての宿命というか、
ある種のジレンマと言うか、、、
なにがそうさせたのか、
たぶんジョンもヨーコもリーボヴィッツも
意識していなかったであろう、その一瞬。
その至福のときをすごした数時間後に起きた悲劇、、、
あの写真が世に残らなくてはならなくなった偶然の必然。
いろんな魂が込められた写真。
その運命じみたものに鳥肌が立ってしまう。

基本はやはりそのパワフル全開なリーボヴィッツなのだが、
それはプロフェッショナルとしては当然なのだが、
ところどころでその人間性というか、
弱さみたいなものが、 見え隠れしていた。
ほんのちょっとだけだけど、
それを覗かせてもらえただけでも、
この映画をみてよかったと思った。
 (2008.2.23)

2010-06-13

ベティ・ペイジ

2006年 
アメリカ
監督:メアリー・ハロン
出演:グレッチェン・モル/リリ・テイラー/デヴィッド・ストラザーン/クリス・バウアー

02May.'08 ギンレイホールにて
★★★★☆

どうやら過酷な人生を送っているようなのだが、
カメラに向かう笑顔がとにかく明るいので、
あまり悲愴感はなかった。

裸になることも、ボンデージを身につけるのも、
それをいやがる様子どころか躊躇すらしない。
逆に楽しんでいるふうに見えた。
だからといって、みせたがっているわけでもなく、
服を着れば清楚な娘でもある。

実際、この映画をみて印象に残っているものといえば、
撮影のときのその屈託のない笑顔やおどけたポーズだけだ。
'50年代という時代。
猥褻だろうが、なんだろうが、
ベティの笑顔は輝いていた。

ベティはたまたまモデルという仕事に、
出会ってしまっただけなのだと思う。
それは生い立ちがどうとか宗教的にどうとか、
世間の道徳観なんてものとは関係なく出会ってしまった。
そしてただカメラに向かうベティの笑顔は極上のものだった。
それがベティの全てだったのだと思う。
だからこそ「ピンナップの女王」となったのだろう。

あの、アニメのベティちゃんのモデルかと思ったが、
違うのだそうだ。
なぁんだ。似てるのに。
(2008.5.4)

酔いどれ詩人になるまえに

2005年 
アメリカ・ノルウェー
監督・脚本:ベント・ハーメル 
原作:チャールズ・ブコウスキー
出演:マット・ディロン/リリ・テイラー/マリサ・トメイ/ディディエ・フラマン/フィッシャー・スティーヴンス/エイドリアン・シェリー

 01Sep.'07 銀座テアトルシネマにて
★★★★★

ブコウスキーの映画だと知って、
絶対行かなきゃと使命感にかられ観に行った。

チナスキー(ブコウスキー)のだめだめっぷりは期待どおりで、
かえって潔くって気持ちがいいぐらいだった。
奇を衒ったり、妙な小細工をしたり、
言い訳がましい表現は一切感じなかった。
たぶんかなり素に近いチナスキーが描かれていたのだろう。

マット・ディロン、
久しぶりに見たらずいぶん渋くなってて、かっこよかった。
なんかひとつ殻を破ったような印象をうけた。
でも時折みせるつぶらな瞳は昔とおんなじで、
妙にかわいくてピュアなものがみえ隠れしていた。
それが憎みきれないチナスキーになっていたのかもしれない。

リリー・テイラーは最高だった。
あの妙に湿っぽいんだけどどっか風が抜けてる感じが、
めちゃくちゃいい。
下着姿のぬめり感がなんだかたまんなかった。
(2007.9.3)

ラストキング・オブ・スコットランド

2006年 
アメリカ・イギリス
監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィテカー/ジェームズ・マカヴォイ/ケリー・ワシントン

05Oct.'07 早稲田松竹にて
★★★★☆

恐怖におびえて恐怖を呼ぶ。
身がすくむほど、息がつまるほど、
とにかく怖い映画だった。

独裁者を作り上げることなんて、
案外簡単なことなのだ。
ほんの小さな不信をひとつ招くことで、
どこまでも残酷になれる。
アミンはそもそもはひとなつっこい人だったと思う。
彼がそんなに特別だったはずもないと思う。

フォレスト・ウィテカーはすごかった。
アミンの怖さ、弱さ、人間臭さ、残酷さ、
その全てを知り尽くしている演技。
もうあの顔を見たくないと思わせ、
出てくるたびに心臓が飛び出そうになった。

ドキュメンタリーではないけど、
それ以上にリアルだった。
ウガンダの悲惨な歴史は確実に描かれていた。
それだけで十分だと思った。
(2007.10.8)

カポーティ

2006年 
アメリカ
監督:ベネット・ミラー 
脚本・製作総指揮:ダン・ファターマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン/キャサリン・キーナー/クリス・クーパー/クリフトン・コリンズJr./ブルース・グリーンウッド

08Nov.'06 恵比寿ガーデンシネマにて
★★★★★

フィリップ・シーモア・ホフマンはやはりすごかった。
予告で画面に映った時、目を見張り、
これは必ず見なくてはと決心して、
今日やっと観ることができた。

とにかくカポーティの葛藤の凄まじさに息をのんだ。

境遇や、抱えていたものが似ていたせいか、
取材対象者の犯人のペリー・スミスにどんどん惹かれていく。
その反面、 作家として真実を求めるあまり残酷になっていく。
狂わんばかりの日々。
「冷血」とは犯人のことだと言っていたが、
カポーティ自身の心情そのものだったのではないかと思わせる。

死刑に対しての恐怖とそれを望む心。
ペリーへの思いとこの作品への使命。
やがて処刑され、『冷血』は完成。
作品としては評価され、成功する。
しかし、 なお苦悩は続き、
それは消えることはなかったのだろう。
彼は書けなくなった。

リチャード・アヴェドンとのエピソードにワタシはときめいた。
うちにある写真集で探したが、70~80年代のものばかりで、
カポーティとペリーの写真はなかった。
何かで見ることはできるのだろうか。 見たい。
アヴェドンはこの二人をどう捉えたのだろう。
 (2006.11.14)