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2010-09-02

ロング・エンゲージメント

2004年
フランス
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトウ/ギャスパー・ウリエル/ドミニク・ピノン/クローヴィス・コルニヤック/ジェローム・キルシャー/シャンタル・マーヴィルト/アルベール・デュポンテル/ドニ・ラヴァン/ジャン・ピエール・ベッケル/ドミニク・ベテンフェルド/ジャン=ピエール・ダルッサン/ジョディ・フォスター/ブーリ・ランネール/ティエリー・ギボール/フィリップ・デュクズヌ/ソレーヌ・ル・ペション・ヴァルジル・ルクレール/ジュリー・ドパルデュー・マウド・レイヤー/チェッキー・カリョ/フランソワ・ルヴァンタル/ミシェル・ヴュイエルモーズ

01Sep.'10 早稲田松竹
★★★★☆

初っ端から、塹壕を歩いている。暗い。寒い。
第一次世界大戦の最中、死刑を宣告されている5人の兵士。
その中にマチルドの恋人、マネクもいた。
容赦なく、えげつなく、扱われている。。。
つい身を硬くしてしまう。

戦場ではブルーの映像で、
マチルド関連はアンバーの映像。
なんか飽きるよなぁって思いながらも、
ところどころで、そこはジュネ、ジュネ色が健在で、
色味がなくても、深いなぁと思うところが、ある。
とかく戦場シーンは、暗くて、
よくありがちな陰影が濃い映像ではあるんだけど、
でも、ちゃんとジュネ色になってる。
どうしてそう見えるんだろう。ホントにすごいよ。

絶望的状況でありながら、
それでもマネクが生きていると信じて貫くマチルド。
おまじないって、いい方法だな。
理由のない希望が持てる。勇気が沸く。
で、問題は抱えながらも、
大手を振って、ハッピーエンドではないけど、
でも、絶望からは救われてる。。。
生きてることもまんざらじゃないと思わせてくれる。
この絶妙な展開が、厭な後味を残さないのだろう。

登場人物が多くて、
相関図が混がらがって、どうにも怪しくなっちゃった。
この人は誰の恋人だっけ? なんて、ちょっと大変だった。
ジョディ・フォスターが出てると知って、後でびっくり。
なんか似てる人がいるなぁとは思ってたけど、
こっちはストーリーを追うのが必死だから、
そこに気づく余裕がなかったのよ。

もう一度、落ち着いて観たい映画だなと、切に思う。

2010-08-19

ハート・ロッカー

2008年
アメリカ
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナー/アンソニー・マッキー/ブライアン・ゲラティ・レイフ・ファインズ/ガイ・ピアース/デイヴィッド・モース/エヴァンジェリン・リリー/クリスチャン・カマルゴ/サム・スプルエル/サム・レッドフォード/バリー・ライス/エリン・ガン/ジャスティン・キャンベル/マルコム・バレット

 14Aug.'10
★★★☆☆

うーん、うーん、うーん、、、
なんだろう、このイヤな感じ。

まずは、えらく骨太で男っぽい映像で、
なんだかがんばっちゃったなぁ、、、って、
で、
自信満々の男が登場したかとおもいきや、
男同士でじゃれあってたり、
爆弾を仕込まれたのがベッカムだと勘違いして、
いやに落ち込んじゃって、、、
でも、ベッカムじゃなかったんだけど、、、
ならいいって話では決してないんだけど、、、

男っぽさを強調してる割に、
なんかフェミニズム的なものを感じて気持ちが悪かった、
ってのが、最初の印象。

とにかく、ワタシが腑に落ちなかったのは、
子どもを人間爆弾にするなんてこと。ホントにやってるの?

戦争は怖い、嫌だ
=テロリストは怖い、残酷
=アラブ人(イラク人)は訳が分からない、気味が悪い

ってのが、
基盤になって物語が展開されているように、
思えてならなかった。
この映画で描かれているイラク人って、
爆弾処理中に通りかかった人が、
携帯電話をかけていたり、
爆弾処理現場に突っ込んじゃったタクシーが、
立ち往生してしまったり、、、
処理班側からすれば、なんとも迷惑な存在になってた。
携帯電話の件ではひとりアメリカ兵が亡くなって、
被害者だと言わんばかりになってたし、、、
でも、いきなり銃を突きつけられれば、
動けなくなるでしょ。
イラク人は自分らの生活をしていただけだよ。
爆弾処理してやってるってえらそうなこというなら、
市民の安全を確認してやれよ。
せめてアラブ語を覚えてからやれよ。

アメリカ軍のプロパガンダというか、
なぜイラクにいるのかっていう言い訳?
のようにしか、見えなかったんだけど。。。
とにかくアメリカ兵主体の映画で、
彼らの仕事ぶりや苦悩を描いているわけだけど、、、
それを描けば描くほど、言い訳になるように思う。

で、実は暗にイラク派兵は失敗だったといってる?
中盤以降、あんなに自信満々だった主人公が、
ことごとく上手くいかなくなっているのは、
アメリカ軍は完璧じゃないことを暗に示してる?

深読みして、そうとれなくもないけど、
だとしたら、なんて面倒くさい映画なんだ。 

「War is Drug」か。
戦うことでしか生きられない人種が、
いるってことは知ってる。
使命感からでも、中毒でも、
戦場に行きたきゃ行けばって思うけど、
自分たちだけで完結してくれと言いたい。
くれぐれも市民を巻き込まないで欲しい。

2010-06-18

ヒトラーの贋札

2006年 
ドイツ・オーストラリア
監督・脚本:ステファン・ルツォヴィッキー
出演:カール・マルコヴィクス/アウグスト・ディール/デーヴィト・シュトリーゾフ/アウグスト・ツィルナー/マルティン・ブラムバッハ

31Jun.'08 早稲田松竹にて
★★★★★

究極のジレンマと矛盾の贋札づくり。
「今日の銃殺より明日のガス室」というサリーの台詞。
何が正義なのか、、、
正しいことなんて収容所では虚しいだけだ。

壁一枚向うでは日々、銃殺が行われている。
ポンド紙幣の贋札の成功のご褒美にピンポン台が贈られる。
そんなところでどうしてピンポンなど楽しめるのだろう。
贋札の技術者たちの待遇は収容所と思えないほどいいのだが、
こういうことが彼らの神経を逆なでしてじりじりと追いつめる。

カール・マルコヴィクスの淡々とした演技がすばらしかった。
眼孔にいつも力が入ってる感じがせつなかった。
禿げてても艶っぽいし。

贋札や偽パスポートの偽造の細かな作業や道具にも
興味をそそられる。
やっちゃいけないことって、覗きたくなる。
けど、命を賭けた贋札づくりだからか、妙に緊張した。
最後までぴーんと張りつめたものの中で、
無理難題を押し付けられたりしないかとそわそわしながら、
観ていた。
(2008.6.5)

善き人のためのソナタ

2006年 
ドイツ
監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク 
音楽:ガブリエル・ヤレド出演:ウルリッヒ・ミューエ/マルティナ・ゲデック/セバスチャン・コッホ

07Feb.'08 目黒シネマにて
★★★★★

いつ何時も背筋がしゃんとしていて、寡黙で一切無駄がなく、
でも眼孔だけがどこまでも深く鋭い。
非情なまでに任務を遂行する大尉。
ロボットのように国家に仕えていたはずが、
ソナタを聴いてしまった。
彼にも人間の血が流れていたのだ。

タイプライターの字がこれほどまで、妖しく艶っぽいなんて。
重い空気をずっと抱えながら、
密かにそうせざるを得ない喜びにほっこりするものを感じた。

昼のシーンがないわけではないのに、
なんだか仄暗い印象。だからなのか、
最後のほんのちょっと微笑んだ顔がすごく明るく見えた。
 (2008.2.8)

2010-06-17

君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956

2006年 
ハンガリー
監督:クリスティナ・ゴダ
出演:イヴァーン・フェニェー/カタ・ドボー/シャーンドル・チャーニ/カーロイ・ゲステシ/イルディコー・バーンシャーギ/タマーショ・ヨルダーン

31Jun.'08 早稲田松竹にて
★★★★☆

美しい古都に戦車は似つかわしくない。
なのに、一瞬にして戦火となる街。
どんどん激しくなるスクリーンをみながら、
守るべきものは何だろうとぼんやり考えていた。

ハンガリー側の映画なので仕方がないのかもしれないが、
プロパガンダっぽさが拭えないのがどうにも気になった。
が、しかしこれは冷戦がゆえの悲劇である。
この映画を観なければ、
この悲惨で理不尽な史実を知ないまま、
遠い国で起きたぐらいのことでしかなかったかもしれない。
そういう意味では観てよかったと思う。

水球の選手でオリンピックをめざすカルチ。
自由を求めて体制に反して運動するヴィキに惹かれる。
どっちつかずのカルチの笑顔がへらへらしたものに見えるのは、
後先を考えない若者特有の行動のようでありながら、
その奥には抱えきれないジレンマがあっただろうと思う。
思いを馳せてメルボルンにいき、
水球がソ連より高い表彰台に立ったとしても、
ハンガリーに自由は戻ってはこなかった。
ヴィキの覚悟をきめた揺るがない佇まいが印象的だった。
(2008.6.05)

2010-06-16

麦の穂をゆらす風

2006年 
イギリス・アイルランド・フランス
監督:ケン・ローチ
出演:キリアン・マーフィ/ポーリック・デラニー/リーアム・カニンガム/オーラ・フィッツジェラルド

25Jan.'07 シネカノン有楽町にて
★★★★★

こんなに怖い、おそろしさを感じた映画はないと思う。
どうしても行き詰まるしかない息苦しさ。
静かに淡々と、でも痛さをカラダじゅうで感じながらの126分。

矛盾が矛盾を呼び、 解きほどけない迷路に落としこまれる。
初めの敵はイギリス大国だったのが、
いづれ、内戦にすり替わり、
気がつくと仲間だったはずの、友達や兄弟が敵になる。
どうしても免れない戦争の構図。
あらためて、戦争の残酷さを突きつけられた。
(2007.1.26)

2010-06-14

君のためなら千回でも

2008年 
アメリカ
監督:マーク・フォースター
出演:ハリド・アブダラ/ホマユーン・エルシャディ/ゼキリア・エブラヒミ/アフマド・ハーン・マフムードザダ/ショーン・トーブ

 10Jul.'08 ギンレイホールにて
★★★☆☆

凧をあげているアフガンの景色はうつくしかった。
差別など問題はあったにしろ、
それでも凧揚げができるぐらい平和だった。
なのに、ソ連が侵攻してきてその様相はすっかり変わり、
そして今はタリバンが蔓延っていて、
緊張を強いられる国になってしまった。

友情、人種、身分の違い、戦争、、、
いろんなものが交錯した中の、やりきれない罪。
ほんのちょっとの勇気がなかったことが、
運命にも翻弄されて償うきっかけすら失ってしまう。
アミールはアメリカに亡命しても、
その十字架は背負っていたのだと思う。
だからアフガンに再び行く決心をしたのだろう。

アミールの十字架も父親の十字架も、
下ろすことはずっとできないだろうけど、
でも最後にハッサンの子の父親にはちゃんとなってた。
アミールは一皮むけたようにみえた。
それはよかったのだと思う。

ハッサンのはにかんだ笑顔がたまらない。
健気なところが余計にせつなかった。

この映画、かなり泣いた。
涙を誘うところは満載だった。
でも穿った見方をすると、
なんか作り物っぽい感じがしてしまった。
映画がきれいすぎるのかなぁ。
ソ連やタリバンが悪者になっているけど、
その責任の一端はアメリカにだってあるんだってことが、
そっちのけにされてるように感じた。
(2008.7.24)

2010-06-12

地獄の黙示録 特別完全版

1979年 
アメリカ
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:マーロン・ブランド/マーチン・シーン/ロバート・デュバル

08Aug.'08 早稲田松竹にて
★★★★☆

ずっと観たい観なくちゃと思いながら、
いつも後回しにしてきた映画。
ある種の覚悟がなければ
観てはいけないような気がしていた。
(おおげさかな)
そして観てから一ヶ月以上になるというのに、
レビューがずっと書けなかった。

オープニングのマーティン・シーンとドアーズの音楽が、
すごくサイケで'70年代で妙な昂揚感で一気に惹き込まれた。
で、やはり映画的に圧巻なのは
『ワルキューレの騎行』のシーンだろう。
一番の見せ場であり盛り上がりになるのだろう。
キルゴア中佐がまずは狂気であり、
この最中のサーフィン、
ナパーム弾、火の海、ヘリコプター、、、
ある意味、アメリカ軍の茶番劇をみせつけられながら、
ベトナムの森が炎上している。
どこかで沸き上がってくる怒りを感じながらも、
ここですでに、
ああ、戦争なんだ、
わかったよ、もう十分だよ、
そう思い知らされる。

ワタシの勝手な憶測だけど、
コッポラはここまではある程度こうしたいというものが
できていたんじゃないかと思う。
『ワルキューレの騎行』のシーンは、
もしかしたら思っていた以上のできだったのかもしれない。
でもここから先、川を遡って行き、
カーツ大佐に出会ってからが、地獄だった。
映画の物語もそうだし、コッポラや制作クルーにとっても。
どうにも抜け出せない迷路にはまり込んでしまったようだ。
終わらせようにも終わらせることもできなくて、
何かに取り憑かれたかのように
続けるしかなかったんじゃないだろうか。

観ている方も急にトーンダウンして訳がわからなくなるし、
眠くなるし、理解しようにもついていけなくなる。
でも後半部分がなければ、『地獄の黙示録』は成立しない。
それもすごく納得できる。

カーツ大佐は、
実のところウィラード大尉(=アメリカ軍)を
利用したってこと?
ウィラードはこの後どうなるんだろう。。。
やっぱりもう一度、観なくちゃかな。

ベトナムの地は本来は美しい楽園だった。
この地を地獄にしたのは、人間でしかない。
そのことを肝に銘じなければ、
この映画の存在価値はないように思う。
 (2008.9.21)

2010-06-07

告発のとき

2007年 
アメリカ
監督:ポール・ハギス
出演:トミー・リー・ジョーンズ/シャーリーズ・セロン/スーザン・サランドン/ジェームス・フランコ

10Jan.'09 新文芸座にて 
★★★★☆

はじめは息子捜しの話かと思って観ていたら、
捜していくうちに、いろいろな真実が明らかになっていく。
帰還兵たちは一見普通の若者のようだが、
なにかしら病んでいる。

イラク人の子どもを殺してしまったと泣いていたマイクが、
捕虜のイラク兵を虐待していた事実。
ハンクは父親として困惑する。
でもこれはマイクだけが特別なんじゃない。
こうして兵士は作り上げられ、蝕まれていく。

戦争が泥沼化していくハウツーをみているようだった。
戦火のシーンはケイタイで撮った画像ぐらいで、
生々しいものはなかったので、迫力はないかもしれないが、
それでも戦争の怖さはこの上なく語っている。
車を停めると襲撃されるという理由で、
目の前の物は轢けという軍の規約。
たとえそれが子どもだろうが何だろうが、
停まらず轢かなくてはならない。
おかしいでしょ。
でも戦争だとこれが正しいことになってしまう。
おかしいと思うことさえ、許されなくなってしまう。
兵士は良心との狭間で、
鬼になるか、気狂いになるか。。。

でもね。
帰還兵が病んでることばかりがクローズアップされてたけど、
「イラクは地獄だった」ってばかり言ってたけど、
イラクは地獄なんかじゃなかったんだよ。
戦争がそうしたんじゃないか。
一番の被害者はあの轢かれた子どもだし、
イラク市民なんだからね。
そこだけは間違えないでほしい。
(2009.6.16)

硫黄島からの手紙

2006年 
アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:渡辺謙/二宮和也/伊原剛志/加瀬亮/中村獅童

29Jan.'07 ワーナーマイカルシネマズ新百合ケ丘にて
★★★★☆

「天皇万歳」
「靖国で会おう」
これほど、虚しい言葉はないと切に感じた。

どれだけ無駄な「死」を重ねたのかを知る。
憲兵の機嫌を損ねた犬の「死」も含めて。

どこか、何かが違うと感じながら、
流されざるを得ない戦争と言う魔物に取り憑かれている。
それでも、
生きることがとにかく大切なんだと教えてくれる。
(2007.1.30)

父親たちの星条旗

2006年 
アメリカ
監督:クリント・イーストウッド
出演:ライアン・フィリップ/ジェシー・ブラッドフォード/アダム・ビーチ/ジェイミー・ベル/バリー・ペッパー

07Dec.'06 ワーナーマイカルシネマズ新百合ケ丘にて
★★★★☆

イーストウッドの視点に共感できた。

戦争ってホントにくだらない。
戦争はどんな理由があっても美化するものじゃない。
兵士はどんなに英雄視され、名誉を与えられても、
英雄だなどと思えないと描いたイーストウッドに賞賛する。

あまりに凄まじすぎる本当の戦争を体験したら、
それを語ることなどできない。
生きて帰っても、
その体験に苦しみながら人生を終えるしかない。

アメリカはこの時代と同じことを、
今もまだやってる。 。。
『硫黄島からの手紙』もぜひ観たい。
(2006.12.8)

2010-06-06

フルメタル・ジャケット

1987年 
アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
出演:マシュー・モディン/アダム・ボールドウィン/ヴィンセント・ドノフリオ/R・リー・アーメイ/ドリアン・ヘアウッド/ケウ゛ィン・メジャー・ハワード/アーリス・ハワード

15Aug.'09 DVD
★★★★★

無性にキューブリックの映画が観たくなった。
この映画、通してきちんと観たことがなかったかも。 
こんなに有名な作品なのに。

汚い言葉がマシンガンのように炸裂して、
たまに字幕に追いつかなくなる。
ハートマン軍曹、しゃべるのが早すぎるよ。
よくもまぁ、こんなに下ネタ言葉があったもんだ。
この訓練シーンにどれだけのリアリティがあるのかは、
わからないけど、兵士を英雄に仕立て上げて、
きれいごとを並べられるより、ずっとましだ。

ここで描かれているのは「狂気の沙汰」
訓練の間に狂っていくもの、、、と、
ベトナムに赴いて、戦地で狂っていくもの。

主人公のジョーカーは、
戦争映画にありがちな屈強な男ではなく、
どちらかと言えばやさ男風で、インテリで、
でも、どこか余裕があるというか、涼しげな顔をしている。
キャラクターとしてはあまり目立たなくて、
実際ハートマンとかデブのレナードの方が強烈な印象がある。
でも張りつめた緊張感の中でジョーカーの眼鏡がみつかると、
ちょっとほっとしたりして、、、 
でもそんなジョーカーも戦地で、実戦で、
だんだん目つきが変わっていた。
「1000ミリ望遠の目つき」になり、
「あの世まで見通せる目」になっていった。

最後のミッキーマウスの歌は、鳥肌ものだった。
ねずみだもん。
ベトコンもアメリカ兵も、
どぶねずみなんだよ、所詮。
明るく歌えば歌うほど、最上級の皮肉になる。

描かれている内容は狂気でも、観ていてなんか落ち着く。
カメラが見ている位置か、角度か、レンズの画角か、 が、
安定しているからかな。
取り立てて変わったことは何もしていないと思うけど、
キューブリックならではの視線があるような気がする。
それがすごく楽に映画を観させてくれる。
そして、適材適所の音楽。
およそ戦争映画じゃ使わないような明るい曲だったり、
ミッキーマウスもそうだけど、とにかく絶妙なのだ。
エンドロールの『黒くぬれ』にもはっとした。
ベトコンの女の子のシーンからこの『黒くぬれ』への流れが、
すごく巧いと思う。
久々に、観終わった時の満足度が高かった。
 (2009.8.16)

2010-06-03

紙屋悦子の青春

2006年 
日本
監督:黒木和雄 原作:松田正隆
出演:原田知世/永瀬正敏/松岡俊介/本上まなみ/小林薫

10Sep.'06 岩波ホールにて
★★★★★

独特な間で時間が流れている。
ゆっくりとおだやかに、静かにほんわかと。

戦時中で戦時中ならではの設定で物語が進んでいく。
そうでありながら、不謹慎かもしれないが、
古き良き時代の日本の平凡な日常がここにはあると、
ワタシには感じた。 うらやましくさえ思った。 
なんだろう。
その空気のぬくもりがじわじわとしみこんできて、
知らず識らずに涙をこぼしそうになっていた。

戦火のシーンを全く出さずに、
その戦時下のリアリティをしっかり表現して、
そしてなお戦争というものをきちんと描いている。

それでいながら、この空気感。
映画の中にいつの間にか入り込んでいて、
この時間この空間にいつまでもいたいなぁって、
えっ、もう終わっちゃったのっていう、
そんな心地よさがあった。
(2006.9.11)

蟻の兵隊

2005年 
日本
監督:池谷薫
出演:奥村和一/金子傳/村山隼人

26Aug.'06 イメージフォーラムにて
★★★★★

あの戦争が何だったのかを真摯に追求する姿に心打たれる。
淡々と事実だけをカメラは追っている。
被害者だということを主張するだけでなく、
どんな酷いことをしたか、 せざるを得なかったということ、
記憶から消してしまいたいようなことにも、
きちんと向きあっている。

奥村さんは見た目には、
普通のどこにでもいるようなおじいちゃん。
そんな普通の人が経験してきた過酷な過去。
これは奥村さんが特別なのではなく、
戦争に行った人はみんな経験しているのである。
決して特別なことじゃないのだということを、 おもいしった。

奥村さんは80歳。
戦友はどんどん亡くなっている。
戦争を伝える人がいなくなってしまうことは、
とても恐ろしいことだと思う。
そういう意味でも、
こうやって真の叫びを残したこの映画の意義は大きい。

奥村さんの頑固でありながら実直な人柄に好感がもてた。
(2006.8.28)

2010-06-02

野火

1959年 
日本
監督:市川崑 原作:大岡昇平 脚色:和田夏十 
出演:船越英二/ミッキー・カーチス/月田昌也/杉田康/山茶花究/稲葉義男/星ひかる

22Jul.'08 新文芸座にて
★★★★★

まさに、これが戦争というものだろう。
極限状態の敵は飢えである。
何のためにここにいるのかすらどうでもよくなる。
人間の尊厳などなんの救いになるというのか。
行く宛もなくただ戦地を彷徨う。
ただ、狂気と化していく。

野火の煙に向かう。
「普通に生活している人に会いたい」
唯一の願いだったのだろう。
戦争はそれを許してはくれないのだが。

船越英二。
最近昔の映画を観てるとよく出てきて、
すごい俳優だったんだと認識をあらたにした。
痩せすぎていて、ずっと誰だかわからなかった。
(2008.8.7)

ビルマの竪琴

1956年 
日本
監督:市川崑 原作:竹山道雄 脚色:和田夏十 
出演:安井昌二/三國連太郎/浜村純/内藤武敏/西村晃/春日俊二/北林谷栄/沢村国太郎

22Jul.'08 新文芸座にて
★★★★☆

昔からこの話があまり好きではない。
水島上等兵のとった行動はアタマでは理解できても、
根本のところではどうしても納得できない。
確かに涙ぐましい話だけど。。。

でも映画としての美しさは、
この水島上等兵の純粋さによるものであるのは否めない。
日に日に僧侶然としていく姿は凛々しい。
そして、 竪琴の旋律がカラダ中に沁みわたる。
荒んだ乾いたココロに潤いをもたらす。
降伏後とはいえ、ビルマが戦地であることを忘れてしまう。

三国連太郎の若く精悍で、
しかも優しいまなざしがたまらなくよかった。
(2008.8.7)

赤い天使

 1966年 
日本
監督:増村保造 原作:有馬頼義 脚本:笠原良三
出演:若尾文子/芦田伸介/川津祐介/千波丈太郎

06Jun.'08 神保町シアターにて
★★★★★

40年以上も前の映画で、モノクロで、
わりかしセットだなって思うところがあるのに、
なのにそれ以上に生々しかった。
麻酔もろくにせず、
のこぎりでぎこぎこ手足を切るシーンが、永遠と続く。
見たくないのに、切った残骸の手や足の指が、
バケツからはみ出していて、
それがどうしても視界に入ってくる。
モノクロでよかったとさえ思った。

あまりに極限状態の野戦病院。
不眠不休の上、
陵辱されながらも兵士を癒そうとする従軍看護婦の西。
『赤い天使』なんてよくいったものだ。
ある意味すごく男目線の都合のいい設定だと思いながらも、
この天使が兵士の夢ってやつなのか。
こういう状態だとレイプだろうがなんだろうが、
許して天使になれるのか。。。
岡部軍医に慕っていく西の健気さが胸を締めつける。
戦争だからこその恋愛なのか、究極に純粋なものを感じた。

若尾文子の背筋の伸びた凛とした姿が美しかった。
(2008.6.20)

清作の妻

1965年 
日本
監督:増村保造 原作:吉田絃二郎 脚本:新藤兼人
出演:若尾文子/田村高広/千葉信男/紺野ユカ/殿山泰司

06Jun.'08 神保町シアターにて
★★★★★

狂気の愛。 狂ってる、狂ってるよ〜
何が起こったかと思った。 どうしてそうなるの。
あぜんと、した、、、するしかなかった。
それまで、なんか淡々とコトが進んでいて、
しかもなんだか落ち着かない音楽がぐるぐる繰り返されてて、
じっとしているのがすごく辛くなって、、、
いい加減なんとかして欲しいと思っていたその瞬間、
狂気が起こった。
殺されるより、怖いコトが。
でも。
何より、誰より、
とことん純粋な愛のために起こしたコトなわけで、、、
憎悪の固まりを結局はきちんと整理して、
おかねを許した清作の男気が感動ものである。
『赤い天使』の西が天使になりきっている女であるなら、
清作も男として奇跡だと思う。
こうまでして自己を捨てて、
愛に全うできる彼らに嫉妬さえ覚える。

最後のシーン。
農作業などやろうともしなかったおかねが、
清作を連れて、清作を座らせて、鍬で土を耕している。
その二人を観たら、 狂気の事件でも村八分になっていても、
それでもこれでよかったんだろうと思わされた。

こんなふうに納得させることができるということが、
すごいのだと思う。
リアルタイムで観たかったなぁ。
(2008.6.22)