2010-06-20

イノセント

1976年 
イタリア・フランス
監督:ルキノ・ヴィスコンティ 
脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ/ルキノ・ヴィスコンティ
主演:ジャンカルロ・ジャンニーニ/ラウラ・アントネッリ/ジェニファー・オニール、マルク・ポレル

31Jul.'08 シネマヴェーラ渋谷にて
★★★★★

とにかく空気が重い。
豪奢な屋敷や格調高い調度品のせいなのか、
美しいけど窮屈なドレスのせいなのか、、、
様々な思惑を宿した気がねっとり絡み合っている。

その空気の濃度を高くしているのが、
主人公トゥリオの身勝手な言動である。
だいたい自分の妻(ジュリアーナ)に
「おまえは妹のような存在で、愛人になったことはない。
テレーザは愛人だ。許してくれ」なんて台詞、
イタリア貴族なら許されるのか?
それでも貞淑な妻はそんなトゥリオを受け入れるのだが、
気持ちは抑えようにも抑えきれず、悶え苦しむ。
そんなジュリアーナがあまりにエロティックだった。
重々しい空気の中だからこそ、なおも艶かしかった。

ジュリアーナは作家のフィリップ・アルポリオと
愛しあうようになり、フィリップの子を身籠る。
トゥリオは堕ろせというが、ジュリアーナは頑に産むという。
柔順だったはずの妻が自分の思うようにいかなくなり、
トゥリオは焦りをみせる。そして、出産。
トゥリオは現実に耐えられなくなり、、、
トゥリオの傲慢さは
自分中心に世の中が動くという妄想の中にあったが、
生身のトゥリオは実はその傲慢ゆえの運命に翻弄されてしまう。
自信に満ち溢れて輝いていた瞳が、
焦燥感や苛立や不安が忍び込み、翳りを帯びていた。
嫉妬という感情から逃れられない瞳。
それがまた何ともいえなくエロティックだと思った。

昼ドラのような物語設定ではあるものの、
ヴィスコンティならではの人間を見せてくれている。
人は追いつめられた時どうなるか、、、
この空気感でなければ
表現できない本質があるように思った。

唯一リラの別荘で二人が愛しあった時だけは、
その重圧から解放され、爽やかな風が吹いていた。
この夫婦にとってこれだけは嘘のないひとときだった、
と、信じたい。
 (2008.8.24)

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